DENGER SUMMER-後編
ギイ…
不気味な音を立てて開く扉。
そーっと中を覗き込むが、灯りがないので何も見えない。
「…やっぱ総悟待つんだった…」
扉にへばり付いたまま、吸い込まれそうな暗闇を見つめる。
月明かりでぼんやりとだが、左右の戸棚には仏像のようなものが見える…気がする。
(このままの方がかえって怖い…;)
意を決して小屋の中へ入った。
やはり暗い。
お札どころじゃない、足元も覚束無い。
「…っ暗い------------!!!」
すると
シュボッ
ジッポライターの火で辺りがいっきに明るくなった。
「あ!やったこれでよく見え…」
・・・・・・
喜んだのも束の間。
「…なーにがよく見えんだ?」
低い声。
恐る恐る振り返ると
ライターの赤い火に顔半分を照らす鬼の形相。
「出たぁぁああああああ!!!!」
ドタドタッ、っとテンポよく後ずさりする。
足裏に何かぶつかって、そのまま尻餅をついた。
しばらくして、その鬼の形相がフーッと白い煙を吐く。
「常務サボってお化け屋敷たァいーいご身分だなオイ」
その声は毎日聞き慣れた声だった。
「………土方…さん…?」
床に座り込んだまま、そこに立つ人物を見上げる。
それは間違いなく、土方だった。
「何で此処にいるんですか…?」
「そりゃこっちの台詞だ!!
警備サボってどこ行ったかと思いきや
こんなトコでなーにやってんだよ!!」
普段では口煩い怒鳴り声も、今はすっごい有難い。
「む、無理矢理連れてこられて…その場のテンションっつーか…」
しどろもどろになって言うを見て、
土方は再びハーッとため息をついた。
「ったく…総悟は?一緒なんじゃねーのか?」
「あ、そうだ。途中でちょっとはぐれちゃって…
1本道だからそのうち来ると思うんですけど…」
「まぁアイツはいいや。戻んぞ」
くるりと向きを変え、土方は小屋を出て行こうとする。
だが。
「…………何やってんだ」
はその場に尻餅をついたまま立とうとしない。
…否、立てない。
「…腰、抜けた………」
ビビったのと安心したのと。
土方は目を細めてかなりの呆れ顔でを見下ろす。
「…お前ここに総悟居たら一生ネタにされんぞ」
「っアイツには言わないで!!絶ッ対言わないで下さい!!!!」
はがしっと土方の足を掴んだ。
「ったくしょーがねェな…」
土方はため息と一緒に煙を吐き、
の両二の腕を掴んで引っ張る。
すると
「ボソボソ…」
どこからかごにょごにょ聞こえる小さな話し声。
2人は目を細めて辺りを見渡す。
「オイ完全に足掴むタイミング逃したじゃねーか」
「そんなこと言ったって土方さんが来るなんて予想外で…」
「んじゃ今いけ!今!!」
その声は小屋の隅の戸棚の下から聞こえた。
「「・・・・・・」」
土方は銜えていた煙草を指で持ち、
戸棚の下にポイッと投げ入れた。
メラメラメラメラ…
「「……ッあっつぁあああああああ!!!!」」
戸棚がガタガタと動き、
最終的には勢いよく横に倒れて、戸棚の下から人が2人出てきた。
「ちょ、これ燃えてない!?髪燃えてない!?」
「銀さん髪より小屋が!!バイト代貰えなくなりますよ!!」
静かに煙を立てている戸棚を必死でバタバタと叩き、
なんとか鎮火を図る2人。
と土方にはとっくにその2人の正体が分かっていた。
「何すんだお前ェ!!警察が煙草のポイ捨てなんかしていいと思ってんのか!?」
そう言って立ち上がり、怒鳴り声を上げるのは間違いなく銀時。
そしてその横で包帯が解けかけているのは新八だ。
「何でお前らがこんなトコにいんだ?」
土方は鋭い目で2人を見る。
「あぁ!?仕事だよ仕事!夏祭り恒例のお化け屋敷のお化け役!!」
「通りで宣伝やってたら沖田さんとさんを見つけて…
やめた方がいいって言ったんですけど銀さんが…」
新八は申し訳なさそうに頭を掻く。
「しかしアレだな。泣く子も黙る真選組女隊士が
まっさか幽霊が怖くて腰抜かしちまうとはなァ!!
神もお上も思うめーよ!」
馬鹿にするようにゲラゲラ笑う銀時。
土方に掴まってようやく立っているは、ばつが悪そうに唇を尖らせてそっぽを向いた。
すると
「局長ぉ…やっぱ戻りましょうよー」
「何を言うか!と総悟が此処に入ったっていうんだから
探さなきゃならんだろう!!」
小屋の外から聞き慣れた声。
4人はひょこっと外を覗く。
「…や…台詞と格好あってませんから」
困り顔の山崎と
素っ裸にお札を貼りまくっている近藤。
「だって怖いじゃん!!いざとなったら悪霊退散・エロイムエッサイム・バルスだよバルス!!」
「最後の違うから!!破壊の呪文だから!!」
墓場に馬鹿な会話が響く。
「…ん?」
新八が墓場の方を見て何かに気づいた。
「銀さん、打ち合わせの時あんなところに人立つ予定なんてありましたっけ?」
新八はそう言って墓場の真ん中あたりを指差す。
暗くてよく見えないが、確かに誰かが立っているような黒い影が見えた。
「や、ねェよ。人魂と墓場から手が出てくるカラクリ以外は」
銀時はそう答えるが、確かにそこには誰か立っているのだ。
4人は顔を見合わせる。
「「「「・・・・・・」」」」
「…や、か、神楽だよ。戻ってきたんだきっと」
「でも…神楽ちゃんにしてはデカクないですか?」
確かに、デカイというかゴツイ。
「「「「・・・・・・・」」」」
「ちょ、お前確かめて来い」
銀時はそう言って土方の背中を押す。
「てめェが行けや!テメー等の仕事場なんだろ!」
「やだよ俺だって今ほら、アレ、幽霊役だから」
「バレバレなんだよ!行って来いっつの!!」
2人が押し合っていると
「ザキ、あそこに誰かいるぞ」
「えー…お化け役の人とかじゃないんですか…?」
近藤と山崎もまたその人影に気づき、そっちの方へ歩いていく。
「多分お客さんだ。たちのこと聞いてみよう。
すいませーんこの辺…」
褌にお札姿の近藤が勇敢にもその人影に近づいて声をかけると
「-----はい?」
くる…
ゆっくり振り向いたのは緑色の恐ろしい顔。
ライオンのように逆立った髪
鋭く突き出た2本の牙
不気味に下に伸びる角
脳天に生える1本の花
それらを彼の持つ懐中電灯が下から照らす。
「「「ギャァァァアアアアアア!!!!!!」」」」
声をかけた近藤と山崎はもちろん、
遠目でそれを見ていたや銀時たちも大声を上げて小屋から飛び出た。
「あぁ…よかった…警察の方ですか?
僕お化け屋敷に入ったはいいけど怖くて動けなくなってしまって…」
「いいいいいいいです動かなくて!!
そのままと わ
そのまま永遠にそこに佇んでいて下さい!!!!」
近藤と山崎はズザザザッと後ずさりする。
警察の方、というのは山崎の隊服を見て判断したのだろう。
「すいません出口まで一緒に来てもらえませんか?」
「「逝けません!!貴方とは一緒に逝けません!!!!」」
じりじりと詰め寄ってくる怪物・否ヘドロ。
近藤と山崎が悲痛な叫び声を上げている間に、小屋から出た4人はダッシュでその場を逃げた。
出口とは逆の、歩いてきた入り口の方へ。
「テメッ、腰抜けてたんじゃねーのか!!」
「治りました!!」
土方を押しのけて猛ダッシュの。
足腰はすっかり元通り。
「あっ!トシ!!!ちょっ、助けてェェえええええ!!!」
それに気づいた近藤と山崎も4人を追う。
「そっちが出口ですか?」
「「「追って来ないでぇえええええええ!!!!」」」
ペドロも猛スピードでそれを追ってきた。
「っ万時屋!テメーらこんなトコで何してる!」
「体中札だらけの警官に言われたくねーよ!!」
走りながら会話を交わす近藤と銀時。
「万時屋の皆さんじゃないですか。いやぁ奇遇ですねぇ」
銀時と新八を見てヘドロは俄かに嬉しそうな顔をした。
それはメンバーには見えていないけど。
「悪霊退散悪霊退散エロイムエッサイムエロイムエッサイム
バルスバルスバルスバルスバルススバル…あ、間違った」
「こんな時に言ってる場合ですか!!
だから最後の違うっつってんだろ!どんだけ天空の城壊したいの!?」
走りながら呪文をブツブツつぶやく近藤。
山崎もその横を走りながらツッコむ。
すると
ドドドドドドド…
前方から何か来る。
「オイ何の音だ…?」
「銀ちゃぁああああああん!!!!!」
前方から猛スピードでこっちに向かって走ってくるのは
血糊が汗で流れて全身を真っ赤に染めた神楽と
先ほどが追いかけられたスクリームマスクを被った総悟(多分)。
「オイィィィィィ!!!なんか前からも変なの来んぞ!!!」
「マスクの方は総悟ですよ!多分!!」
「総悟こっち来んな!そのままUターンしろUターン!!」
視界が悪いのかフラフラ走ってくる総悟(多分)。
はその腕を引っ張ってそのまま総悟の背中を後ろから押す。
「何でィ、生きてやがったのか」
「たかがお化け屋敷で随分な言われようなんですけど!!」
に背中を押されながら走る総悟。
「銀ちゃあん!聞いてヨ!あのサド野郎が仕掛けに用意してた強力水鉄砲全部ブッ放してきやがって
折角のメイクこんなに落ちちゃったヨ!!台無しネ!!」
「怖えーからこっち見んな!!」
血まみれの神楽も混じって走る。
「皆さん速いなぁ、待って下さいよー」
ドスンドスンと地響きを立てながら確実に背後に迫るヘドロ。
((((待てませェェェェん!!!!))))
次の瞬間
ビンッ!!
先頭を走っていた銀時が、地面に落ちていた釣り糸に足を引っ掛けた。
恐らく、一番最初に出てきた女の人形についていた釣り糸。
「うおッ!!」
銀時は倒れながら咄嗟に真横の土方の首根っこを掴む。
「てめッ…!」
引っ張られる土方も、マスクを被ったままの総悟の頭をがしっと掴んだ。
前の3人が同時に倒れていくと同時に、
その後ろを走っていたメンバーはそれに突っかかって
ズシャ----------ッ!!!!
全員が盛大にコケた。
それはもう、入り口のすぐ傍。
「あ!出口だ!ありがとうございますおまわりさん。助かりました。
ああ怖かった…」
ヘドロはそう言ってうつ伏せで倒れているの手を力任せに握って
強引に握手をした。
「……ど…どういたしまして……」
幽霊より生きてる者の方が怖い。
--------この夏の教訓。
Dグレ連載ホラーが笑えないのでせめて明るいホラーを思って書きました。
もしホラー連載が銀魂になっていたらこんなテンションを延々と書いてたんだろうと思います(笑)
っていうか、ホラー背景写真を拾うのが怖いです(笑)
ヒロインはお化けが嫌い。ということに書いてる最中決まりました。
銀魂のテンポは神です。
空知先生は神です。