簡単に切れてしまった糸は








また結び直すなんてこと、出来ないんだよ









紙一重で繋がった糸の結び目は











ガラッ!!




バタバタバタバタバタ…






バンッ!!!!







「近藤さんッ!!!」

勢いよく障子が開くと同時に

血相を変えたが局長室へ入ってきた。

…ブーツを履いたまま。

「…土足だぞオイ」

「近藤さん…っ無事ですか!?」

の足元を見て怪訝な顔をする土方をスルーして、

は上座に座る近藤に近づく。

「暗殺されてませんか!?大丈夫ですか!?」

そのまま近藤の前にしゃがみこんで、近藤の腕を掴んだ。

「や、質問おかしいよねちゃん?

 暗殺されてたら君の目の前にいるのは一体誰なんだ」

近藤は困った顔でを見上げる。

「ついでに土方さんも無事ですか!?」

「別についででいいけどなんかムカつくなその言い方」

近藤の腕を掴んだまま、はその横に座る土方を見た。

土方は飽きれた顔で、銜えていた煙草を指で持つ。

すると

「局長ォ、本庁の方がお見えになって…」

開け放されたままの障子から、山崎がひょっこり顔を出した。

「あ、ちゃん。戻ってたんだ。お帰…」

……っ山崎この野郎ォォォォォォォ!!!!





ドゴッ!!!!






底の硬いブーツで強烈な蹴り。

山崎は1mほどふっ飛んで中庭に倒れる。

ギャアアアァァァアアアア!!!!

 傷開いた!!絶対ぱっくり開いたってばこれ!!!


「とっつぁんから死んだって聞いて慌てて戻ってきてみりゃあお前…ッ

 敵に情けかけられて死に損ねただァ!?

 士道不覚悟だ切腹しろゴルァアアア!!

倒れた山崎を跨いで胸倉を掴む。

「土方さんと同じこと言ってますぜ」

「ちょ、もうその辺にしとけ!!

 一応怪我人だから!切腹しなくても死んじゃうから!!」

近藤が慌てて腰を浮かした。

「あたしに無断で死んだ奴は怪我人だろうが何だろーが

 問答無用で切腹だゴルァァァァ!!!」

「言ってることムチャクチャだよ!

 心配してくれてんの!?早くくたばって欲しいの!?どっちなの!?」

山崎は冷や汗だくだくでの手を掴む。

「大体あの人数と鬼兵隊をどうやって…」




「万時屋だよ」




居間に座ったまま、煙草を銜えて土方が言った。

「…旦那?」

はぱっ、と山崎の胸倉から手を離した。

そして部屋の中にいる3人を見る。

近藤は腕を組み、浅く息を吐いた。

「…伊東先生から河上万斉を退けたのは、奴だ」

「………………」

はしばらく黙り、

山崎の上から退いてそのまま正門の方へ歩いていく。

「オイどこ行くんだ?」

「ちょっと野暮用。別にいいですよね、あたしホントなら今日まで出張だったんだし」

3人に向かってそう言って、正門から屯所を出て行った。

3人は顔を見合わせる。









あ゛----------ッ!!!くそ!!!!

 やってらんねェェええええ!!!


コミカルな音を立てるパチンコ台に頭突きをかます男が1人。

すっくと席を立ち、そのまま賑やかな店を出た。

「何が新台入れ替えだコノヤロー

 もうパチンコなんて二度とやらねー結野アナに誓ってやらねー」

がしがしと頭を掻き、自動ドアをくぐると


「負けたんですか?」


店の横の自販機に寄りかかっていた

銀時は目を丸くしてを見る。

「なんだお前。待ち伏せなんかしやがって、ストーカーですか?」

「眼鏡くんに聞いたらここだって言うんで。でも隊服でパチ屋なんか入れねーでしょ?

 つーかアンタもいい年こいて昼間っからパチ屋に入り浸りッスか?

 ホント、年中フラッフラしてますね」

はそう言って自販機から背を離し、銀時を見る。

そして持っていたコンビニの袋からあずきバーを取り出して、

それを銀時に差し出した。

「ちょっと、お話しません?」








2人はあずきバーを銜え、川原沿いの長椅子に座っている。

「あー…暑っちィなーオイ。

 まだ6月だってのに太陽ちょっと頑張り過ぎなんじゃねーのー?」

椅子の背もたれに深く寄りかかり、眩しい日差しに目を細めた。

「で?何なの?真選組は世間話するためにアイス奢ってくれるような連中だったっけ?」

「あははっ、イメージ悪いんだなァ。こう見えて結構稼いでますから、

 アイスくらい奢らせて下さいよ」

はそう言って笑う。

「……まァ、アイスは口実ですけど」

「?」

アイスを食べ終え、は体を銀時に向けて深く頭を下げた。


「…ありがとう、ございました。

 色々と手を貸して頂いたみたいで」


銀時は目を細める。

アイスを口に銜えたまま頭を掻き、浅く息を吐いた。

「別に。俺は俺のしたいようにしただけだ。

 まァ報酬はあのマヨラーからたんまり貰うしな。

 つーかお前この非常事態にどこ行ってたんだよ」

アイスの棒を銜えて上下させ、

銀時は横目でを見る。

「お上の接待で長官と京都に。

 こぉいう時女隊士は便利だからって、しょっちゅう連れ回されるんスよね」

は前髪を掻き上げ、はーっとため息をついた。

「途中他の隊員から連絡を貰って急いで戻って来たんですけど…」





『オメーは黙って此処に居ろ』





『っどうしてだよとっつァん!!

 聞いただろ!?山崎が殺られたかもしんねーんだよ!?』

京都の本陣

は悠長に座っている松平を見下ろし声を荒げる。

『伊東だけならまだしも、裏で高杉一派が絡んできたとなりゃァお前の手には負えねェ。

 戻ったところで無駄な怪我するだけだ。此処でほとぼり冷めんの待ってろ』

『………っそれ本気で言ってんのかよとっつァん…

 あたしは真選組だ!!皆が戦っている時に1人安全なところになんかいられない!!
 
 お上の接待なんかやってられっか!あたしは江戸に戻る!!』







「…結局、肝心なところで何も出来ませんでしたけど」

顔を伏せ、自分の足元を見下ろす。

銀時はそんなを横目で見て、ふーっと深くため息をついた。

「酷なこと言うようだが…俺も間に合ったところで、何も出来なかったと思うぜ。

 幕府直属の組織だ、アイツらも何れはこういうことが起こることくらい覚悟してたさ」

そう言って足を組み、足の上で頬杖をつく。

「それでも、あたしの命1つで近藤さんの腕くらいは守れるんじゃないですか?」

どきっとするような言葉に、

銀時は目を細めてを見た。

「何、お前そんなにあのゴリラ好きなの?」

「好きですよ」

迷いもなくきっぱりと言い切った

銀時は目を丸くする。

普段から彼らを小馬鹿にしたような言い方をするから、

敬意や愛情はまったくないのだと思っていた。

「バカでゴリラでストーカーでも、あたしにとっては大将で、兄貴みたいな存在です。

 あの人が居なきゃ今のあたしは無い。それは他の皆も同じです。

 土方さんも総悟も山崎も」

「隊の誰が欠けても今のあたしは無くなるんです」

膝の上で指を組んで、静かに流れる川をじっと見つめる。

「お前は野郎共とは少し考え方が違うらしいな。

 アイツ等はどこで仲間が死のうが知ったこっちゃねーつってたぜ」

「…分かってますよ。あたしのこんな考え方は、

 土方さんたちに言わせりゃ只の甘い戯言だってことくらい」

そう言って椅子の上で膝を抱えた。

「近藤さんに拾われて、真剣を手にした時からいつだって死ねる覚悟は出来てるんだ。

 真選組の…近藤さんのためになら…この命喜んで捨てられる」



「でも…っ皆が死ぬのは嫌だ…!」




震える肩を自分の手で押さえ、膝に顔を埋めてそう言い切った。

銀時は目を細める。

「皆が死ぬのを見るのは自分が死ぬより…怖い…ッ」

白い膝に、ぽたりと透明な雫が落ちた。

初めて見る、彼女の泣き顔。

「………矛盾、してんぞ」

顔をそらし、銀時は言う。

「分かってるよ!」

は顔を上げて声を荒げた。

その目にはいっぱいの涙が滲んでいる。

「いつ誰が死んでもおかしくねーってことも…

 それを割り切らなきゃやっていけないってことも!みんな分かってんだ!!

「でもあたしは…っ!皆がいなきゃどうしていいか分からない…!!

 もう全部失うのは……たくさんだ……ッ」






『俺達と来ねぇか?』








"家族"と呼ぶ程甘いものではなく

"仲間"と割り切るにはあまりに濃い





すれすれのところで繋がっている





それはいつ





途切れてしまうか分からないのに。






「……………………」

再び膝に顔を埋め、泣きじゃくるを横目に

銀時はボリボリと頬を掻いて、

その手をゆっくりに向かって伸ばした。



わしゃっ



「っ」

撫でるというより、掴むような力で

の髪に大きな手が乗る。

はびっくりして思わず顔を上げた。

「お前が心配なんかしなくなって、アイツ等は大丈夫だよ」

反対の手で自分の頭を掻き、

面倒くさそうに銀時は言った。

は涙でぐちゃぐちゃになった目を丸くして銀時を見る。

「どうやら悪運の強ェ死に損ないばっか集まってるらしいからな。

 ありゃ一筋縄じゃいかねーだろうよ」




「お前に心配されるほどヤワじゃねぇって、お前が一番解ってんじゃねぇの?」






……解ってる











分かってる、よ。










「…………旦那ァ」

「あ?」

ぐすっ、と鼻をすすり、が口を開いた。


「カレーの匂いする…」


大きく温かい手はカレーの匂い。

「昼飯に昨日のカレー食ったんだから当然だろ」

何を当たり前のことを、と言わんばかりに銀時は言って

の髪から手を離した。

(当然って…あたしにめっちゃ関係ないんだけど…)

は手で涙を拭い、飽きれるように笑う。

(頭なんか…近藤さんにしか撫でられたことないのに)

「………やっぱ似てる」

「何が」

「ううん、何でも」

ふふっと嬉しそうに笑い、髪を押さえた。

銀時は眉間にシワを寄せて首をかしげる。

「長々とつき合わせてすみませんでした。

 それから…やっぱり色々、ありがとうございます」

すっくと立ち上がり、ハーフパンツの砂を掃って再び銀時に礼を言った。

「礼はいいからギャラくれ、ギャラ」

「それは土方さんから貰って下さい。あずきアイスなら幾らでも奢りますから」

椅子に立てかけていた刀を腰に差す。

「それじゃあ、また」

浅く頭を下げ、は人込みに紛れて歩いて行った。

銀時はそれを目で追い、ため息をついて再び頭を掻く。



「……オイ。そろそろ出てきたらどうだ?」



そして店のわき道に向かって声をかけた。

「…いつから気づいてたんですかィ?」

建物の影からひょこっと顔を出したのは総悟。

「最初からだよ。ったく、盗み聞きたァ警察も堕ちたなオイ」

「まァそう言わずに。出るに出られなくなったんですよ」

総悟はそう言って笑い、が座っていたところに入れ替わって腰を下ろした。

「………性転換した男なんじゃねーのってくらい女のケカラも無ェ奴だったが…

 やっぱアイツも女だな。仲間のことに関してはおめーらと違って女々しいわ」

空を仰ぎ、銀時は言う。

総悟はそれを横目で見て、思い出すような顔をした。

「…アイツの泣き顔初めてみたのは…姉上の葬儀ン時ですかね…」

「そりゃあもう手ぇ付けらんねーくらい号泣して、

 1週間くらいずっと目ェ腫らして、立ち直るのに1ヶ月以上かかってたかな…」



「てめーのことじゃ一度も泣かなかった奴が、

 他人のことじゃ馬鹿みてェに泣くんですよ」



総悟はそう言って呆れるように笑う。

「小せェ時近所のガキにいくらケンカで負けようが、

 仕事でいくら大怪我しようが1回だって泣いたことがねェ。

 アイツはてめーの大事なモンの為に泣く奴なんでさァ。

 まぁあの通り意地っ張りなもんで、俺等の前じゃ泣きやしやせんが」

銀時は両腕を背もたれにかけて、そんな総悟を見た。

「1回全部失ってるだけに、今自分を囲ってるモンを失うのが怖いらしい」

「……………………」





無意識に彼女に加担してしまうのは








"終戦だ。白夜叉"









自分と重なることが、あるからだろうか?








「そんなん怖がってちゃァ本当に覚悟のある剣は振るえねーと俺は思いやすがね。

 確かに俺や土方さんに言わせりゃあ、アイツの考えは甘い戯言だ」

総悟はそう言って立ち上がる。

「…いいんじゃねーの。チンピラ警察に、そういう奴が1人くらい居ても」

銀時はフ、と笑い、顔を伏せた。

総悟もつられるように笑う。

「そうかもしれませんね」

そして椅子の傍を離れた。

「俺が聞いてたこと、どうかには内密に頼みまさァ」

「言わねーよ。告げ口したトコで俺に得なんかねーし」

銀時はハーッとため息をついてガシガシと頭を掻く。

総悟は再び呆れるように笑った。









 

 

「おじさーん、お団子2つー」

「はいよー」

街の茶屋の椅子に座り、店主に向かって2本指を立てた。

赤い布の敷いてある長椅子に両手を着き、

雲1つにない空を見上げた。

(…なんだかな。性格全然違うのに…やっぱ似てる節があるよな…)

右手で自分の頭を摩る。

「はい、お団子2つ。1本はおまけだよ」

茶屋の店主はそう言って団子3本が乗った皿をに差し出した。

「わァ、ありがとう!」

は嬉しそうに笑って皿を受け取り、1本を口に銜える。




"お前に心配されるほどヤワじゃねぇって、お前が一番解ってんじゃねぇの?"




「…………………」

もごもごと口を動かし、膝の上で頬杖をつく。



「ぬしが晋助の言っていた真選組の女隊士でござるな」



「ッ」




後ろから聞こえた声に、反射的に柄を掴んだ。


「抜刀したら周りの人間を斬る」


「っ!」

2人の周りには、人が大勢行き交っている。

はギリッ、と歯を食いしばり柄から手を離した。

(…河上…万斉…ッ)

「一人難を逃れたのは幸か不幸か、どちらにせよ命拾いしたでござるな」

「…それはアンタたちの方なんじゃないの?」

は目を細め、横目で万斉の背中を睨む。

「虚勢を張らぬ方がいい。ぬしらとて、

 坂田銀時の助けが無ければとうに壊滅していたでござろう」

「アンタはその旦那に負けたんでしょう?

 包帯チラつかせて言ったって説得力のカケラもねーっつーの」

ハッ、と鼻で笑い、足を組んだ。

万斉は横目でを見て、再び正面を向く。

「…やはり、晋助の言っていた通りの女でござるな」

万斉もまた、薄く鼻で笑って顔を伏せた。

「幕府の犬のクセに、国に興味を持たぬ面白い女がいると言っていた」

「…そりゃどうも。文句言っといてよ。顔の傷消えねーんですけどって」

はそう言って左頬を擦る。

薄くはなったが、頬骨のあたりには10cmほどの白い傷が残っていた。

「鬼兵隊だか何だか知らないけど、あんま幕府の犬ナメんじゃないよ。

 犬には犬なりの忠義と意地があるってモンだ。

 一度噛みつきゃ簡単には離さない。真選組はしつこいよ?」

そう言ってニヤリと笑い、黒い背中を睨んだ。

「……ぬしもまた、面白い歌を奏でるでござるな」

「荒々しいガールズロックかと思いきや、時折影のあるブルースが垣間見える。

 真選組は本当に面白い歌を持った者が多い」

万斉はそう言って立ち上がる。

「案ぜずとも、拙者は手を引くでござるよ」

「っ!それどういう意…」

バッ!と振り返ると、そこに万斉の姿はなかった。

「…………………」

浅くため息をつき、くるりと向きを変える。

「あ!!お団子1本無い!!」

離れた人込みに、三味線を背負った黒い背中。

「-----また1つ、楽しみが増えたでござるな」

団子を銜え、そのまま人込みに紛れて行った。











「戻りましたぁ」

「オウ、どこ行ってたんだ?」

局長室に入ると、近藤はあぐらを掻いて刀の手入れをしている。

「ちょっと…友達に出張土産を渡しに」

「え、何ソレ。俺らにはないくせに?」

は苦笑して後ろ手で障子を閉め、近藤の後ろに正座した。



ごつん



「!」

そしてそのまま、近藤の背中に頭を寄せる。

「な、何だ!俺にはお妙さんという心に決めた人が…」

深読みすんじゃねーよゴリラ

皆ァァァァ!!この子理不尽だよぉぉぉぉ!!!!

は頭に体重をかけたまま、呆れるように笑った。

近藤は困った顔で刀を床に置く。

「何だよ…小遣いならとっつァんに頼めよ」

「そんなんじゃありませんー」

眉をひそめながらも、の頭を退かそうとはしない。

再び刀を持ち、打ち粉で刀身を叩く。





--------繋ぎ止めててやるよ





野郎共がいくら何を言ったって。





あたしには「絆」と呼べるものはこれしかないから










しがみついてでも、繋ぎ止めてやる。













真選組ヒロインでシリーズやってんのに、
真選組動乱編ノータッチってどうなの?と思って原作沿いを書きました(笑)
銀さん夢みたいな、近藤さん夢みたいなものになってしまいました。
このヒロインは書いてるうちに銀さんと近藤さん大好きな子になってしまってます。