デンジャラスデェト











ピンポーン








「はいはーい」

万事屋に響くチャイムに、雑用魂染み込んだ新八が玄関へと走る。



ガラッ



「よっ、眼鏡くん!」

さん」

玄関前に立っているのは私服姿の

「銀さんにご用ですか?」

「うん、やっとオフがとれたから約束果たそうと思って。旦那いる?」

「居ますよ。寝てますけど」

「どうぞ」、と言って大きく戸を開き、を中に入れる新八。

はブーツを脱いで部屋の中へ入る。

「お邪魔しまーす…ってホントだ、寝てるよ」

ソファーいっぱいを使って横になっている銀時。

は呆れた顔で腰に手を当てた。

「今日仕事は?」

「今んトコ入ってないんです」

「不安定な事業だなぁ」

新八の言葉にため息をつき、はソファーに近づく。

「旦那ぁ、パフェ食いに行きましょうよー

 奢るって約束したじゃないッスかー」

少し屈んで姿勢を落とし、

イビキをかいて寝ている銀時に声をかけた。

「んぁあ〜?」

間抜けな声と同時に、気持ち良さそうだった顔がしかめっ面になる。

しぶしぶ目を開き、眉間にシワを寄せてを見た。

開いても死んだ魚みたいなのはいつものこと。

「……なんだ、来たのかテメー」

「今日オフとれたんで早い方がいいと思って。

 あたしの知ってるお店、午後は結構混むんですよ」

「ったく何するってもいきなりだなオメーはよぉ」

がしがしと頭を掻きながらゆっくり起き上がる銀時。

「しょうがないでしょ。あたしら警察はアンタらみたいに暇じゃないんです。

 事務的にもらった休みじゃないと自由に出歩けませんからね」

はため息をついて腕を組んだ。

「新八、今日仕事は?」

「残念ながらまだ1件も」

「んじゃー黙って此処にいる理由もねェな」

大きなあくびを1つして、重い腰を上げる。

「じゃ、ちょっくら出てくるわ」

「銀ちゃんアタシも行きたいアル!!」

を追い越して玄関へと歩く銀時を、神楽と定春が追った。

「だーめ、コイツは俺の善意に感謝してパフェを奢るっつってんだから、

 俺以外はダメに決まってんだろーが」

(…別にいいんだけどな…)

は隣でそう思いながらも面倒くさくなりそうなので黙っている。

「じゃあ、しばらく旦那借ります」

「どうぞいくらでも」

新八と神楽は玄関で2人を見送った。

は後ろ手で戸を閉め、先に階段を降りている銀時に続く。

「お前の言う甘味処ってどこにあんの?」

階段を降り立ったところで銀時は振り向き、を見下ろした。

「屯所の近くです。ちょっと裏路地入るからだいぶ穴場ですよ」

「そりゃ楽しみだな」

銀時はそう言って笑う。

もつられるように笑い、2人は並んで屯所方向へ歩いていった。

「…何だかんだで仲良くしてるなァ。あの2人」

玄関から出て2階から2人を見送る新八。

は他のチンピラ警察と比べて性根が腐ってないネ」

「ねー定春ー」と神楽。

(性格的には姉上に近いんだけどな…)









2人がかぶき町を屯所方面へ向かって歩いていると

「銀さん!!」

「「っ」」

後ろから女の声。

「その凛々しい後姿はまごうことなき私の銀さんね!?」

振り返ると、不●家のペ●ちゃん人形に向かって話しかけている忍者が1人。

「お前ワザとやってんだろ。

 見えててワザとやってんだろ」

「こないだの変態くの一…」

「ッあなたこの間銀さんのところにいた…

 まだ婦警プレイが続いてるの!?」

さっちゃんはペ●ちゃん人形から離れて下がった眼鏡を戻し、

キッとを睨む。

「続いてねーし最初からやってねーよ」

銀時はあきれた顔でさっちゃんを見た。

「それで2人は一体何をしてるの?」

「出掛けんだよ。コイツがパフェ奢ってくれるっつーから」

銀時は面倒くさそうにそう答え、親指でを指す。

「何ですって…!?」

さっちゃんは目を見開く。

「それは…デートってこと!?

 白昼堂々銀さんとデート!?」

「デートが白昼で何が悪いのさ;」

は眉間にシワを寄せた。

「あなたが警察だってことは銀さんはあなたに虐められる側になってしまうってことでしょう!?

 銀さんは常に私を虐める側じゃなきゃならないの!

 だからあなたは銀さんと一緒にいちゃいけないのよ!!」

「「ワケわかんねーよ!!」」

「問答無用!!」

さっちゃんはわけの分からないことを言いながら、

勢いよく右足を振り上げてきた。



バシッ!!!!



ぅおわっ!!

は咄嗟に腕を前に出して強い蹴りを受け止める。

「銀さんがMに走るなんて許せないわ!!

 あなたはここで死ぬか警察を辞めるか!

 選択肢は2つに1つよ!!」

「どっちもゴメンだよ!!」

はそう言ってぐっ、と腕を前に出した。

「オイ気をつけろよ。そいつ変態だけど腕は確かな殺し屋らしいから」

さっちゃんが両手に構えた苦無。

うぉぉい!!銃刀法違反で逮捕するぞコラ!!

「上等よ!手錠を銀さんに渡しなさい!!

 それで逮捕されるなら本望だわ!!」

「バカだろお前!バカだろ!!!」

「あなたに何の恨みもないけど死んで頂戴!

 私と銀さんの将来のために!!」

ギラリと光る苦無の先端。

「ちッ…!」

もやむなく腰の刀を掴んだ。

すると



ピピーッ!!




「「っ」」

笛の音。

「はーいお姉さん方ー路上で喧嘩はよくないよー」

そう言って近づいてきたのは笛を銜えた総悟だった。

その後ろから土方が歩いてくる。

「…総悟…と土方さん」

ヤバイ、と顔に冷や汗が流れた。

「非番だと思ったらこんなトコでなーにやってんだお前」

総悟より1歩前に出て、土方はじろりとを睨む。

「ちゃ、チャンバラごっこ…」

「嘘つけェ!明らかに殺し合いが垣間見えたぞ!!」

道に土方の怒鳴り声が響いた。

「なんだか煩くなってきたわね…

 銀さん、私必ずあなたを救いにくるから!それまで待ってて!!

 Mの道に染まらないで!!」

「煩くしたのはテメーだよ」

さっちゃんは土方たちの目をすり抜けて

そのまま人込みの中に消えていった。

を怒鳴る土方は、その後ろに立っている銀時に気づく。

「何でお前まで此処にいんだ?」

土方は眉間にシワを寄せてと銀時を交互に見る。

「あ、今日あたし旦那とデートなんです」

「…デートだァ?」

「デートなの?これ」

逃げるように銀時に寄り添う

銀時は目を細める。

ひくっと口を引きつらせる土方を見て、銀時はニヤリといやらしく笑った。

「何お前、ひょっとして妬いてんの?

 やだやだ、さっさと妹離れしなさいよおにーちゃん」

「誰がおにーちゃんだ」

馬鹿にするように言った銀時を、

いつもに増して鋭い眼光で睨む。

「あたしがオフに誰と何しようがあたしの勝手じゃないですか。

 警察がプーとデートしちゃいけないんですか?」

「や、プーじゃねェから。

 仕事入れば収入あるから」

腰に手を当て、唇を尖らせる

銀時は困った顔で突っ込んだ。

「あーそうだな。テメーが非番にどこで何してよーが

 俺たちには全くもって関係のねェことだ。行くぞ、総悟」

土方はそう言ってスッ、と2人を追い越す。

「んじゃ2人共、ごゆっくり」

後に続く総悟は2人にそう言って土方の後を追って行った。

「…アイツも見た目によらず過保護だな」

「そうですか?ウチほど放任主義なトコないと思いますけど」

土方と総悟の後姿を見送りながら2人は反対方向へ歩く。











「あ、うまい」

やっとのことで目的地である甘味処に着いた2人。

そこの人気メニュー、

抹茶宇治金時デラックスパフェを口に入れた銀時は一言そう言った。

「でしょー?抹茶の苦味と宇治金時の甘さが絶妙ですよね〜!

 アイスと生クリームも濃厚で美味しいし」

向かいの席で同じものを食べるも幸せそうにスプーンでアイスを掬った。

「やーしかしホントに穴場だな此処。

 こんな甘味処あるなんて知らなかったわ」

「結構前に見つけたんです。組の皆はこういうの興味ないから

 大抵1人で来るんですけど、たまに妙ちゃんとか花子ちゃんと食べにくるんですよ」

「奴らが甘味処なんか行ってたら気持ち悪ィだろ」

は笑って「そうですね」と答える。

「ほんとに奢りなんだろーな?」

「もちろんですよ。1つ、あたしの依頼聞いてくれれば」

「依頼?」

口に生クリームをつけて、銀時は目を細めた。











店を出たは、銀時を河川敷へと連れて行った。

人気の少ない、ただっ広い土手。

この辺りは夜になると橋の下には屋台が並ぶ。

「おーい、依頼って何だ?猫探しかー?」

の後ろを歩く銀時はそう言っての背中を見た。

は立ち止まり、振り返る。



「あたしと一戦やって下さい」



ニッ、と笑うに、銀時は目を丸くした。

そしてすぐに飽きれた顔でため息をつく。

「却下」

「えェー!?金払えばなんでもやってくれるのが万時屋なんでしょー!?」

の顔が一転する。

「どーして真選組ってのはどいつもこいつも血の気が多いのかね」

銀時はわしゃわしゃと頭を掻き、面倒くさそうにを見た。

「テメーの道楽に付き合ってやる暇も義理もねェんだよ。

 おめーんトコのゴリラもマヨラーも形振り構わずケンカふっかけてきやがって…

 テメーらマジで血ィ繋がってんじゃねーの?」

眉間にシワを寄せる銀時。

「これは立派な依頼ですよ?金は払うって言ってんじゃないッスか」

「バカ。金貰ってまで喧嘩なんかしたくねーの。

 俺ァ心は永遠に少年だがもうヤンチャできる年じゃねェんだから」

はふーっとため息をつき、

前髪をかきあげる。

顔を上げたの目つきは鋭かった。

「…ま、選択肢はあげませんけど」



ガシャン!



「っ」

腰に2本挿していた刀のうち1本を銀時に投げて寄越す。

銀時はそれを受け取った。

「使って下さい。あ、刀身がない、なんてことはありませんからご安心を」

にこっと笑う

銀時には耳が痛い話だ。

「……聞き分けのねェ女だな」

「百も承知です」

そう言って自分の腰から刀を抜く。

「安心して下さい。あたし剣の腕は隊で中の上ぐらいなんで。

 旦那が負かした局長や副長より全然弱いですよ」

鞘をカランッ、と足元に落とし、

邪魔にならない位置までブーツで蹴った。

「なーにが安心だよ。第一お前と闘りあう理由が…」



ガキンッ!!!




「っ」

話の途中で勢いよく距離を縮めてきた

咄嗟にぬいた刀が火花を散らしてぶつかる。

華奢な体からは想像もつかない太刀筋に、腕にビリビリと衝撃が走った。

「…っのやろ……ッ」

「ぼやっとしてると怪我しますよ。

 剣術は中の上でも体術は土方さんの折り紙つきなんです、よっ!!」

刀を一旦引いて、そのまま振り上げた右足で銀時の腹を蹴った。

銀時は鞘を盾にそれを受け止める。

「…お前ホンットあのマヨラーとそっくりだな 間合いの詰め方とか瞳孔の開き具合とか」

「どうも」

足を地面につけ、砂利を深く踏み込む。

「女の味方騙ってマジで野郎には容赦がねェらしい」

「いいんですよ。野郎には容赦ないくらいが丁度いい」

体勢を整え、再び刀を構えるの目に殺気が宿った。

「馬鹿にもされないし。それでようやく、旦那とは互角にやれるってモンでしょ」

刀身の鈍い光が瞳に反射する。

銀時も目を細め、鞘をその場に捨てた。

「…口で言っても分からねェ奴には…

 体で教えるしかねーようだな」

そして右手を前に出す。

「そうですよ」

ブーツが砂利を蹴って、目にも留まらぬ速さで銀時の間合いまで詰めてきた。

直前で柄を両手で握り、銀時の左脇腹に狙いを定めて刃を横に振る。

銀時は左手で腰の木刀を縦に抜き、

の刀を木刀で受け止めた。

銀時の右手の刀が真っ直ぐを狙う。



ガキンッ!!!



「ッ」

は左手に持った鞘でその刃を押さえた。

(俺の捨てた鞘…!)

はニッ、と笑い、そのまま体を捻って

銀時の顎の下から踵を勢いよく振り上げた。

「ぶっ!」

堅いブーツの踵は銀時の顎を直撃。

は刀を持ち直し、両足を地面について銀時と距離をとる。

「ち…ッやりにくいなオイ…」

口元を擦り、銀時はを睨む。

(真正面から突っ込んでくんのは他のチンピラ警察と変わりねーが…

 確かにあの身のこなしは厄介だ)

「…さて、と…そろそろケリつけるか」

ふーっとため息をつき、チラ、と横目での後ろに見える川を見た。

両手で柄を握り、刀を傾けてを刃を正面へ向ける。

同時に強く右足を踏み込んで、いっきにとの距離を縮めた。

「ッ」

(速い…!!)

「ちょっと手荒ェが勘弁しろよ」

勢いよく横に振った刀の刃を直前で逆刃にして、

そのまま刃の裏での脇腹を撃った。

「っつ…!!」

表情を歪める

間髪入れず、空いた左手が首に伸びてきた。

「ッ!」

は咄嗟に左手を顔の前に出して首を庇う。

銀時はニヤリと笑い、その左手で首ではなくの着物の襟を掴んだ。

そしてそのまま力任せにの体を後ろへ倒す。

わッ!ちょっ…

ぐらっ、とバランスを崩し、2人はそのまま後ろへ倒れた。






バッシャーン!!!!





勢いよく川の中へダイブ。

水しぶきが2つ、大きく飛んだ。

「ゲホッ、ゴホッ…!!」

「よく反応したな。首狙われるのに嫌な思い出でもあんのか?」

全身ずぶ濡れになって川から起き上がった2人。

銀時が先に立ち上がってを見下ろした。

「………っ」



『テメーの名前と心意気くらいは覚えといてやるよ』



冷えた首を手で押さえ、は銀時を睨む。

「…何のつもりッスか…旦那まであたしが女だから手加減してやろうって!?」

「そんなんじゃねーよ」

顔の水を手で掃いながらため息をついて、

銀時はまだ座り込んでいるの二の腕を掴んだ。

「テメーがそこらの野郎より強いのは知ってる。

 だがその小手調べに俺を巻き込むんじゃねーよ」

そう言いながらぐいっ、と引っ張って立ち上がらせる。

「テメーはこうでもしねーと頭冷えねーだろ」

「………………」

2人は岸に上がり、それぞれぐしょぐしょになった着物をぎゅーっと絞る。

乾いた砂利に水がボタボタと垂れた。

着物の袖も絞りながら、は腑に落ちない顔で銀時を見上げる。

それからすぐに前髪をかき上げ、打たれた脇腹を押さえた。

(…戦い方っつーか太刀筋っていうか…

 似てる、ものがある…気がする)

これでも侍、一度剣を交えた相手の太刀筋は忘れない。

(こないだの高杉一派と桂一派の戦いにこの人が関わってたとなると…

 攘夷戦争で旦那が奴らと一緒に戦ってたって噂はホントなんだろうな…)

「何だよ。跡残るような打ち方はしてねェぞ」

の視線に気づいた銀時は目を細める。

「あ、いや…そんなのは気にしてねェんでいいです」

確かに打たれた瞬間は激痛が走ったけど、後引く痛みではない。

は脇腹から手を離した。

「さて、と…そろそろ帰ろうぜ。

 帰りが遅ェとのゴリラとマヨラーがうっせーだろ」

「…この格好で帰るだけで十分どやされると思うんですけどね」

銀時は自分が持っていた真剣をに投げて寄越す。

はその柄を受け取って鞘に戻し、

自分の刀も一緒に腰に挿した。

「あーあ、散々なデートだったなオイ」

土手を登りながら、銀時は頭を掻いてため息をつく。

「こっちの台詞ッスよ。変態くの一には絡まれるし、土方さんには怒られるしこの通り水浸しになるし…」

「俺のせいじゃねーし」

「や、最後のはアンタのせいですよ」

濡れて額に張り付く前髪を横に分けて、は銀時を見上げ苦笑した。

「また、付き合って下さいね」

「二度とごめんだよ」

「まぁそう言わずに。またパフェ奢りますから」

「そんな話に乗ってたらいくつ命あっても足りねェっつーの」

にこりと笑う

銀時は眉間にシワを寄せてを見る。

「じゃあ、屯所あっちなんであたしはここで。

 我侭、聞いてもらってありがとうございました」

濡れた頭をぺこんと下げる

銀時も濡れた頭を掻き、ふーっとため息をついた。

「チャンバラ無しなら、いつでも付き合ってやるよ」

そう言ってに背を向け、かぶき町へと歩いていく。

は顔を上げ、ふふっと笑ってその後姿を見送った。










「……おかえり」

「…た、ただいま帰りました」

屯所の玄関で怪訝な顔をして立っている近藤と土方。

「何でそんな服がシトシトしてんだ?」

「……水かけ合いっこして遊んできました」

「かけ合いっこなんて青春の1ページなレベルじゃないだろ。
 
 どー見てもバケツでブッかけ合いましたってレベルだろ」

玄関に立ったままのを見て近藤は目を細めた。

予想通りの反応に、は黙って2人の顔を窺っている。

「お前万事屋と一緒だったんじゃねェのか?

 なんでそれで濡れて帰ってくんだよ?」

土方は腕を組んで睨み越し。

「あー…と…アレです、川で溺れてた子供を旦那と一緒に助けたんです」

「アイツがそんな人命救助の為に水浸しになるとは思えねェな」

鋭いツッコミ。

全くもってそうだ。

「もーいいじゃないですか。お咎めくらうようなことは何にもしてませんよ」

開き直ってそう言いながら、濡れた前髪をかき上げる。

奥から歩いてきた総悟がバスタオルを持ってきて、に向かって投げた。

「ありがと」

「廊下濡らすといけないんで、縁側から入ります」

タオルを受け取り、そう言って玄関を出て行く。

近藤と土方はため息をついて顔を見合わせた。






「うーわ、足袋までぐっしょりだ;」

部屋の前の縁側でブーツを脱いで廊下に足をつく。

濡れた白足袋も脱いで、ブーツと一緒に縁側に干した。

「色んな意味でムチャクチャだなぁあの人…」

ブツブツいいながら袴の帯を緩めていると

「さすがのお前も旦那には負けて帰ってきたのかィ」

「まーね。あの人多分総悟でもキツ…」

後ろから聞こえた声に普通に答えて、ハッと気づいた。

縁側に立つ総悟はニヤリと口の端をつり上がらせる。

「…どっから尾けてきてたの」

「人聞きの悪いこと言うな。カマかけてみただけでさァ」

総悟はそう言って靴を脱ぎ、の部屋に上がった。

「オメーが旦那と一緒に居て、勝負ふっかけねェハズがねェ」

「……………」

タオルを頭に乗せたまま、は唇を尖らせて顔をそらす。

「非番に刀2本挿してくのもおかしいと思ったしな。

 ま、土方さんたちには言わねェから安心しろィ」

そう言ってそのまま廊下を歩いていく総悟。

相変わらず鋭い。

ははーっとため息をつき、障子をしめて着物を脱いで左脇腹のサラシを捲ってみた。

…確かに、強い突きだったのに跡は残っていない。

「…化けモンだありゃ」

濡れた前髪をかき上げ、ふーっとため息をついた。

「…っくしゅん!!」

盛大なくしゃみ。

ずずーっと鼻をすすってワイシャツを羽織る。








「…いてて…っとに手加減ねェなぁアイツ…」

赤くなった顎を押さえ、ブツブツ文句を言いながら家へと戻る銀時。

全身ズブ濡れゆえ、街行く人が振り返って銀時を見た。

「…っふぇっくしょい!!!」

豪快なくしゃみをして鼻をすすり、濡れて少しストレートになった銀髪を掻き上げた。
 








やっとこさ銀さんとデート。
シリーズ第1弾に約束して今実現しました(笑)
行きつけの甘味処にはたまに総悟が付き合ってくれます。