実家に帰らせて頂きます。-後編-
「…すいませんでした」
結局桂を逃がしてしまい、戻ってきたは床に正座して銀時に頭を下げる。
「ったく、警察ってのはどいつもこいつも血の気が多すぎんだよ。
壊したモンしっかり弁償しろよコノヤロー」
「旦那が桂と親交あるのは知ってたんですけど…
まさか向こうから尋ねてくるとは思ってなかったんで…」
「俺だって思ってねーよ。タイミング悪ィな全く…」
銀時は乱暴にため息をついてガシガシと頭を掻いた。
「銀さん、僕今日は道場に戻るんで。
これで失礼します」
「おー」
「さん、銀さんに変なことされたら警察に…って
あなたが警察でしたね。心配いらないか」
新八はそう言ってに軽く頭を下げる。
「ありがとう。妙ちゃんによろしくね」
がそう答えると、新八は返事の代わりに再び頭を下げた。
「まぁいいや、とりあえず晩飯作れ」
「私手伝うネ!」
銀時はリモコンでテレビをつけ、ソファーの上で横になる。
が台所に立つと、酢昆布を銜えたまま神楽が駆け寄ってきた。
「神楽ちゃん…だっけ、総悟がいっつも君の話してるよ。
チャイナがどうのこうのって」
冷蔵庫の中を覗きながらが口を開く。
「私アイツ嫌いアル。はあのサド野郎と仲いいアルか?」
「仲いいっつーか…幼馴染みたいなモン。
神楽ちゃんぐらいの年の時にはもう一緒に剣振ってたし、
その前から近藤さんの所で世話になってたし…」
冷蔵庫から適当に材料を出して台所に置き、
着物の袖を紐でまとめて背中で結わえる。
「…家族、みたいなものかなぁ…隊のみんなは」
そう言って台所に向かうの横顔は寂しそうだった。
「…………………」
銀時はテレビを見つつ、そんなの声を聞いて目を細める。
「俺は行く!!!今すぐかぶき町にパトカー回せ!!!
あの野郎のところに居ること程危険なことはない!!!」
近藤は立ち上がり、山崎たちを追い越す。
「つーか証言って…お前等仕事もしねーで何そんなの調べてんだよ;」
土方は呆れた顔で山崎を見上げた。
「やっぱ俺たちちゃんに戻ってきてもらいたいんです!」
「アイツいないと隊に活気ないし…」
「華もないし…」
「生意気だし、はしたなくて女の色気なんかカケラもねェけど…
それでもやっぱり…居ないと寂しいじゃないですか」
山崎はそう言って2人を見る。
近藤も座っている土方を見下ろした。
「………トシ」
「…しょーがねェなったく…」
土方は重い腰を上げ、短くなった煙草を灰皿に押し付けた。
「ダチんとこならともかく、イカレ甘党野郎のトコに居られたんじゃあ
こっちから出向く他ねェな」
「なら急ぎましょうや」
屯所の入り口から総悟の声
門の前にはエンジンのかかったパトカーが一台待機している。
総悟はニッ、と笑い、運転席に乗り込んだ。
土方と近藤も、靴を履いて外へ出る。
「………………」
定春と一緒にテレビの前に座り込んでいる神楽をよそに、
は自分が割った窓の外をぼーっと眺めていた。
綺麗な三日月の映える、空気の澄んだ夜。
「そろそろ家に帰りてェんじゃねーの?」
「っ」
厠から戻ってきた銀時がソファーに腰を下ろし、を見る。
「…別に。ちょっと思い知らせてやるんですよ。
もうちょっとデリカリーってものを持った方がいいって」
はそう言って立ち上がり、銀時の向かいに腰を下ろした。
「お前だって分かってんだろ。
あのムサイ連中にそんなもんねェことくらい」
頭の後ろで手を組み、銀時は呆れたようにため息をつく。
「その中に女が1人いりゃ、いずれはこうなることくらい分かってんじゃねーの?」
向かいに座るを見る真っ直ぐな目。
はテーブルに頬杖をつく。
「………………」
「その場の賑やかさに家族を求めたって、
その先には何もねーぜ?」
「っ」
銀時の言葉に顔を上げ、は銀時を見上げた。
「お前のいう居場所も家族も、昔からあそこだけなんだろ?」
『一緒にいるとあったかい。家族ってこんな感じなのかなって、ちょっと思っちゃう』
「…それは旦那も一緒なんじゃないですか」
はそう言ってテレビを見て笑う神楽を見る。
「俺は好きで置いてるわけじゃねーんだよ。
アイツらが勝手に居座ってるだけだ」
銀時は面倒くさそうに前髪を掻き上げた。
はそんな彼を見てくす、と笑う。
「…そういうとこ、近藤さんそっくり」
「なんか知らないけど勝手に周りに人が集まってくる。
慕われてんだかそうじゃないんだかすっげー微妙で、
でも自然と人を引き寄せる力がある、っていうのかな」
ソファーの上で膝を抱え、顔を伏せて笑う。
「そのくせぶっきらぼうで不器用で、突き放すクセに優しくて、
そういうところは土方さんと似てる」
は顔を上げ、銀時を見て再び笑った。
「嬉しくねーよ」
銀時は顔をそらし、頬を掻く。
すると
「たのも---------!!!」
「「っ」」
玄関から男の大声。
玄関の戸が壊れたままだから声がよく通る。
「誰だこんな時間にうるせェな…」
銀時は重い腰を上げ、廊下を歩いていく。
もソファーから立ち上がって廊下を覗き込んだ。
「うるせェぞ今何時だと思っ…」
玄関に出ると、店の前には近藤と土方、そして総悟が立っている。
銀時は眉間にシワを寄せた。
「チンピラ警察が揃って何の用だ?
テメーらの世話になるようなことは何もしちゃいねーぞ」
「…うちの隊士が邪魔していると思うんだが」
手前に立つ近藤が真っ直ぐ銀時を見る。
「……………」
銀時は横目で家の中を見て、居間からこちらを覗いているを見た。
はサッ、と隠れる。
「居るけど?何、連れ戻しに来たの?
いっとくけどお宅の娘さんが勝手にうちに尋ねてきたんだからな。
拉致ってウチに置いたんじゃねーからな」
壁に寄りかかり、銀時は腕を組んで3人を見る。
「…!迎えに来た!!帰ろう!!」
近藤は真っ直ぐ家の中を見てに言う。
はソファーの上で膝を抱え、顔を伏せた。
神楽と定春がテレビの前から離れ、に近寄る。
銀時はふーっとため息をつき、頭を掻いた。
「何れはこうなること分かってて小娘拾うたぁ、
よほどのお人好しなんだなオメーんとこの大将は」
そう言って土方を見る。
「…俺だって不思議でしょうがねーよ。
あんな生意気な小娘、いつか根ェあげて出てくと思ってた。
だがどうしたもんか…」
土方は銜えていた煙草を指で持ち、ふーっと煙を吐く。
「アイツが居ねーと隊に締まりがねェんだよ」
真っ直ぐ廊下の先を見る土方
「稽古も面白くねェし」
その後ろで総悟も続いた。
「すまん!!どうも俺たちの中でお前は、昔のちっこいのままらしい!」
中に向かって大声で叫ぶ近藤
は顔を上げ、軽く後ろを向いてその声に耳を傾ける。
「連れてきた頃はまだガキで、扱いなんか総悟と一緒だった!!
でも今はそうもいかねェんだよなぁ!?
どんどん大人っぽくなって、いつまでも俺たちと何もかも一緒ってワケにはいかなくなってくる!」
「…近藤さんが言うとなんか嫌らしいですぜ」
「何を言うか!!」
近藤は振り返って総悟を怒鳴った。
そしてふーっと深呼吸して、再び廊下の向こうを見る。
「!お前もいつかは好きな男が出来て、家庭持って、俺達とは別々の道を行くだろう!
でもその時までは!!ムサい男連中と一緒に居てやってくれ!!」
中まで響く近藤の声。
「お前が居ないと隊が落ち着かなくてしょうがねェ!!」
は膝を抱えたまま、目を見開く。
銀時は近藤の横顔を見てフ、と笑った。
「勝手な野郎共だ…なぁ、出て来てやれよ」
そう言って廊下の先を見る。
「………………」
はすっくと立ち上がり、ゆっくり廊下を歩いて玄関に出た。
「…何時だと思ってんですか、局長」
「大の男が揃いも揃って!警察のクセに近所迷惑極まりないじゃないッスか!」
は近藤を見上げ、その後ろにいる2人を横目で見る。
「……出てけって言ったクセに」
「ホントに出てく奴があるか馬鹿。
だからテメーはガキだっつーんだよ」
土方はそう言ってを睨む。
は気に食わなそうにそっぽを向いた。
「どいつもこいつも、素直じゃねェなオイ」
「旦那…」
壁に寄りかかり、銀時は呆れたように笑う。
「迷惑…かけてすいませんでした。
あたし、帰ります」
はそう言って深く頭を下げた。
「あー帰れ帰れ」
銀時は頭を掻きながら家の中へ戻っていく。
そして何かを思い出したように立ち止まり、
に向かって何かを軽く投げてよこした。
「っ」
それはが銀時に渡した家賃と食費。
「ドアと窓の修理費は引いといた。あとはいらねェ」
「え、でも…」
「いつかのパフェ奢るって話、あれまだだろ。
あれ期待してっから」
そう言って再びに背を向け、中へ入っていく。
は両手で封筒を持ち、目を丸くしてその後姿を見送った。
「……はい」
柔らかく笑い、浅く頭を下げる。
奥で手を振る神楽に、嬉しそうに手を振り返して。
「…近藤さん」
静かに手を下ろし、は振り向いて近藤を見上げる。
「…あたし、好きな男なんかいませんから。
家庭持つ気もないし、ずっと腰に刀挿してアンタらについて行く気でいますから」
そう啖呵をきって3人を追い越し、
階段を下りていく。
「「「………………」」」
3人はそれを目で追い、顔を見合わせた。
「…それはそれでどうかと思うけどな…」
「心配しなくても一生男なんか出来やしませんよ」
呆れ笑いを浮かべる土方と総悟
近藤はの後姿を見てフ、と笑う。
「嬉しいじゃねーか」
階段を下りたは2階を見上げた。
「早く帰りましょうよ、腹減った!」
「腹って言うな。お腹と言いなさい」
「今更だろ」
「今戻ってもオメーの夕飯ねェんじゃねーのかィ」
「それ困る!」
パトカーに乗り込む4人。
銀時は再び玄関まで出てきて、そんな様子を笑いながら見下ろしていた。
「…似てんじゃねーか。あいつ等」
無駄に長かったので3つに分けました。
ヒロインは過去にも何回か家出未遂してます。
1回目は拾われ当初総悟と喧嘩して。2回目は神楽ぐらいの時思春期で。
その度にちゃんと連れ戻されてます(笑)
要は愛されてんですよこの子!!!