実家に帰らせて頂きます。-中編-










「「「ええぇぇえええ!?が家出ェ!?」」」」


朝礼をする広間に響く隊士たちの驚きの声。

「ちょっ、局長マジですか!?」

「そうなんだよ…の部屋に書置きが…」

近藤が肩を落として畳みの上に紙を乗せた。

山崎たちは紙に群がっての書置きを読む。

「最近色々ありやしたからねェ…とっつぁんの視線がやらしいとか

近藤さんが風呂覗いたとか、土方のクソヤローが憎くてしょうがねーとか、

 土方のアンチクショーに早く死んで欲しいとか…」

土方の向かいで総悟が淡々と口を開いた。

「んだよ局長と副長のせいかよ!!」

隊士から野次が飛ぶ。

「あれは覗いたんじゃない!!不慮の事故だ!!!」

「つか最後の2つはテメーの願望だろうが!!!」

怒鳴る近藤

総悟の胸倉を掴む土方

総悟はいつも通り

「心配いりやせんよ。年頃の娘が考えることでさァ、すぐ戻って来ますって」

「テメーと同い年だからこそその思考に不安があるんだがな」

土方は眉間にシワを寄せて口元をひきつらせる。

「自分で出て行った手前、戻ってきづれェんじゃないですかィ。

 とりあえず陽が沈むまで様子見てみましょうよ」

「…そうだな…」

近藤は腕を組み、表情を険しくさせた。








「あ、おいしい」

テーブルに出された料理を口に運び、新八は意外、という風に目を丸くする。

「すげェなオイ。冷蔵庫の残りモンが変身しちゃったよ」

「銀ちゃんのチャーハンよりずっと美味しいネ!」

「男ばっかりだから料理くらいできないとって、ミツバさんが生前よく教えてくれたんですよ」

はそう言って最後の一皿をテーブルに置き、

神楽の隣に腰を下ろした。

「やっぱ女は多少の料理出来ねェとな。

 ふりかけご飯とか可哀相な卵で留まってるようじゃ男は引っ掛からねーよ」

ご飯をかっ込みながら、銀時が言う。

「それから…」

茶碗を右手に持ったまま、左手で木刀を抜いて天井に向かって振り上げた。





ゴッ!!!





ドサッ!!!





鈍い音。

木刀と一緒に人が勢いよく振ってきた。

「納豆しか出せねー女もな」

銀時は木刀を拾って振ってきた人物を見下ろす。

「…いたた…さすがね銀さん、今日もしっかり私のツボをついてくるわ」

「うるせーよ朝っぱらから不法侵入してんじゃねーぞコラ」

頭を押さえて立ち上がる、白の忍装束を着た眼鏡の女。

「…もう1人住人いたの」

は目を細めた。

「あ?コイツは違…」

「ッ誰なのその子は!!家政婦!?銀さんにコキ使われたくてわざわざご飯までこさえちゃって…!

 いやらしいわ!!不潔よ!!」

銀時の言葉を遮り、を見て悲痛な声を上げる。

「……誰、この人
不潔はアンタの脳内だよ

「さっちゃんさんっていって元御庭番衆の凄腕忍者なんですけど…

 まぁ今は只の変態です」

新八は中指で眼鏡を上げて困った顔をする。

「しかも警察ですって!?婦警プレイなの!?

 手錠と拷問で婦警プレイなの!?あなた制服と手錠を銀さんに貸しなさい!

 私が犯人役をやるから!!拘束・拷問ドンと来いよ!!」

「あーもーなんかウゼーんですけどこの人 
色々ギリギリだぞオイ

さっちゃんの言葉に怒りを抑えながらは眉間にシワを寄せた。

「旦那の女ですか?」

「バカ言ってんじゃねーよ。ただの変態ストーカーだ」

(この人の周りって変な人が多いんだな…)

すると



ピンポーン



店のチャイムが鳴った。

「お客さんだ」

新八がソファーを立つ。

「あーあたしが出るよ」

はそう言って玄関に向かった。



ピンポーン



「はいはい、っと…」



ガラッ



「遅いぞ銀時。何度チャイムを鳴らせば出て来…」



・・・・・・・・・・




数秒見つめ合うと、来客・桂。

「あッ!ヤバイ桂さん!!」

…ッカーツラァァァァあああ!!!

気づいた新八の言葉はもう遅く、

どこに隠していたのか、はバズーカを肩に乗せて構える。

「ちょっ、おまっ、ドアドア!!!」









ズドン!!!!










物凄い音と共にドアが勢い良く吹っ飛んで、

辺りは灰色の煙に包まれた。

は桂を追って壊れた戸から外に出て行く。

「…アイツが警察だってこと忘れてた」

「桂さんとエリザベスの出入り禁止にしないと

 毎回ドア壊されますよ」

居間からでも外が見えるほど見通しがよくなった。

「銀時、何だあの小娘は」

デスク正面の窓からひょっこり顔を出す桂。

「てめッ、入ってくんなよ!!

 こっちにバズーカ向けられたらたまったもんじゃねェ!!」

「そう言うな。俺と貴様の仲だろう」

桂はそう言ってひらりと窓から中に入ってきた。

「ったく…次から次へと押しかけてきやがって…

 ウチはホテルじゃねーっつってんだろーが」

前髪をかき上げ、銀時は面倒くさそうにため息をつく。

「あの小娘何者だ?人の顔を見るなりバズーカをぶっ放つとは…

 まるで何処ぞのチンピラ警察だな」

「そのチンピラ警察の1人だよバーカ」

冷静かつ呑気な桂の言葉に、

銀時は呆れた顔で答えた。

「何?真選組に女子がいるとは初耳だぞ」

「俺も最近知ったよ。女でもそこらの男より遥かに強ェ、

 ナメてると痛い目みるぜ」

そう言ってどかっ、とソファーに腰を下ろし、

テーブルに頬杖をついて桂を見る。

「何故真選組がここにいる?貴様奴等と手を組むような腐った男だったのか」

「違げーよ、ちょっと事情あって居候させることにしたんだ」

「居候ですって!?それはつまり四六時中銀さんと生活を共にするということ!?

 許さないわそんなこと!!誰が許してもこの私が許さないわ!!」

「うるせェよお前何様!?」

悲痛な声を出すさっちゃんを怒鳴って、

銀時は再びハーッとため息をついた。

「とりあえずお前等出てけ。ヅラもアイツがいるうちは此処来んな。

 しょっぴかれるぞ」

2人に向かってシッシッ、と追い払う手の動き。

すると

かつらァァああああ!!!








ガッシャーン!!!!







「「
おわぁあああああ!!!」」

勢いよく窓を割ったのハイキック。

「一先ず退散せねばな。銀時、また来るぞ」

「来んなっつってんだろーが!!!!」

割れた窓から外へ出て行く桂。

もその後を追い、家の屋根を伝って走っていく。

「…ドアも窓も弁償してもらわねェとな…」









ああぁぁぁあああ!!!もう陽が沈んじゃったじゃーん!!!!」

屯所に響く、近藤の声。

陽はすっかり沈み、外は真っ暗。

広間に夕食が並び始めているというのに、は帰ってこない。

「どーするよトシ!!お前腹減ったら戻ってくるんじゃねーのって言ったじゃん!!

 戻ってこねーじゃん!!どーするよマジで!!!」

「うるせーなちょっと落ち着けよみっともねェ!!」

向かいに座る土方も耐えかねて怒鳴った。

「そこらの浪士に絡まれてるかもしれねェ…

 あぁー!心配になってきた!!!」

「その心配はねェだろ。仮にも真選組隊士、剣の腕だって問題ねェ。

 その辺は近藤さんが一番分かってるだろ?」

フーッ、と煙を吐き、テーブルに頬杖をつく。

「でも女の子だぞ!?そこらの男より強いけど黙ってりゃーフッツーの女の子なんだから!!

 つーかフッツーの女の子より可愛いんだから!!」

「そうやって甘やかすからアイツが調子に乗るんだよ。

 一晩くらい放っときゃいいんだ」

力説する近藤に、土方は呆れた顔でため息をつく。

「こりゃ男と一発かましてんじゃないですかィ」

「何ィィィィィィ!!??一発って何だ一発って!!!!

 そんな破廉恥なことお父さん認めません!!!断じて許しません!!!!」

茶をすすりながら悠長に口を開く総悟。

近藤はテーブルに足を乗せて大声を出した。

「アイツに男なんざいねェよ。心配しすぎだ」

短くなった煙草を潰し、テーブルに頬杖をついて近藤を見上げる。

「分かりやせんぜ土方さん。年頃の娘は彼氏が出来ても親には報告しないモンでさァ、

 親の知らないところでもうあんなことやこんなこと済ましちまってるかも…」

いやぁアアアアアあああ!!!!

頭を抱えて悲鳴を上げる近藤

土方ははーっとため息をつき、額に手を当てた。

「どうせダチん所にでも転がり込んでんだろ」

「…の友達っていったら…

 お妙さん…花子ちゃん…お通ちゃん…栗子ちゃん…」



「万事屋の連中とも仲よさそうでしたよ」



せんべいをかじる総悟に、近藤と土方の視線が集まる。

「……や、それはねェだろ…」

「ないない」

手と首を横に振る2人。

「「………………」」

2人の顔に冷や汗が浮き出た。

「いやいやいやいやいや…在り得ないでしょ」

「どーこの物好きがあんなイカレ甘党野郎と…」

「「………………」」


「「いやいやいやいやいやいや!!!!」」
 

「…うるせーなァ」

声を揃える近藤と土方に、総悟は眉間にシワを寄せる。

「そんなに気になるなら迎えに行ったらいいんじゃないですかィ」

「いや、まだ万時屋の野郎んトコって決まったわけじゃないからね」

「きっと眼鏡の姉貴んトコだよ」

2人はふいと顔をそらし、相変わらず額から冷や汗をだくだく流していた。

すると

「局長!山崎です!!」

障子の向こうから山崎の声。

3人は顔を上げる。

「どうした」

土方が障子を開けると、廊下には山崎の他にも隊士が何人か立っていた。

「昼間、ちゃんらしき女の子をかぶき町で見たとの証言が!」



・・・・・・・




「「「予想当たっちゃったじゃん」」」












To be continued