Fighting Girl!-前編-










「…あ゛--------------っ……」

早朝7時

は隊服に着替えた後、再び布団にもぐって突っ伏せていた。

右手で腹を押さえ、左手で腰を押さえて。



原因はあれ。



「くっそー…月に1度の女の試練……」

静かにズキズキと痛む腹。

それに比例して腰も痛い。

だるい。

動きたくない。

機嫌も悪くなる。

いいことがない。ほんとに。

(薬効かないんだもんなァ…あーッ…イライラしてきた…)

すると



ガラッ



「なんでい、起きてやがったのかィ。

 朝礼だ、さっさと来いって土方さんが…」

いつものようにノックもなしに障子を開けてきた総悟。

は顔を上げ、物凄い形相で総悟を睨む。

流石の総悟も1歩たじろいだ。

「……ノックしろっていっつも言ってんだろうがよォー…」

ドスの効いた低い声。

隊服なのにまだ布団の中

「…ちッ…これだから野郎は…」

いつにも増してご機嫌斜めな言葉遣い

は腹を押さえたまま布団から出て、総悟を追い越し、フラフラと廊下を歩いていく。

総悟は首をかしげ、その後を追った。



「遅せェぞ!朝礼はとっくに始まってんだ!」

広間の障子を開けるなり土方の怒鳴り声が飛ぶ。

「…すいません」

腹を押さえ、テンション低く謝って手前に正座した。

後からきた総悟はその隣に腰を下ろす。

「全員揃ったところで本題に入る。

 今日のスケジュールだがまず一番隊は…」

近藤が話を進めていく中、は表情を強張らせて正座を守っている。

(…あ-------…正座キツい…腰に来る…)

痛みにイライラが募って、表情が更に強張ってきた。

変な汗も出てきている。

「オイ、すっげー顔してやがるぜィ」

横の総悟がそれに気づいて怪訝な顔をした。

「……何でもない」

言っても無駄なので言わない。

「朝っぱらから冷や汗だくだくでさァ、

 ウ●コか?ウ●コ我慢してんのか?」

「何でもねーってば」

あー早く朝礼終わんないかな。

冷や汗が顎を伝って拳の上に落ちた。

「おい聞いてんのか?」

「…はい?」

ハッ、と我に返ると土方がこっちを睨んでいる。

「お前顔色悪いぞ。厠ガマンしてんのか?」

その横で総悟と同じ事を聞いてくる近藤。

の眉がぴくっと動いた。

「女の子はガマンして便秘になるっていうからなァ。
 
 ガマンはいかんぞーガマンはー」

近藤はハッハッハと大声で笑う。

本来なら冗談で受け入れられるそれも、逆鱗にふれる直前。

膝の上で拳をプルプルさせる。

腰が痛い

腹が痛い

些細なことでブチ切れそう

「ンなくだらねーことで常務サボんじゃねェぞ」

新しい煙草を銜える土方の言葉。

遂に



ブチッ




「うるっせーな生理痛だよ悪いかよ!!!!」





立ち上がると同時に大声を怒鳴った

広間がシン、と静まり返り、隊員全員が言葉を失ってを見上げた。

土方は銜えた煙草をポトリと落とす。

「野郎共には分かんねーだろ!?

 痛いんだってばこれマジで!!!子宮が伸縮してんだよコレ!!!」

そして下手にいた山崎の胸倉をぐわっと掴む。

「仕事!?あーやってやるよ!!子宮の伸縮くらいで常務休むなって

 どっかのマヨラーに言われるからやってやるよ!!女ナメんなよ!?」

散々山崎を振り回して、捨てるようにぺいっ、と胸倉から手を離した。


バンッ!!


勢いよく障子を開け、刀を持って廊下に出る。

ドン、ドン、と大きな足音を立てながら廊下を歩いて行った。

「……ちったァ恥じらいっつーモンを持てや…」

新しい煙草を銜え、土方はハーッとため息をつく。

「ま、まァ…しょうがねェよな…

 アイツの痛みは男の俺達には分かんねーんだから」

近藤は腕を組んで困ったような顔をした。

「…俺姉上から聞いたことがあるんですけど」

「どうした総悟」

総悟が口を開いた。


「親指の爪と皮膚の間に針をぐりぐりしながら少しずつ入れていけば

 野郎も手軽に痛みを味わえるってんでさァ」


「「ギャアァァあああ!!!!痛い痛い痛い痛い!!!」」


総悟の言葉に隊員の全員が悲鳴を上げる。

「無理だトシ!俺には耐えられない!!

 俺にはの痛みを分かってやれないよ!!」

「んな方法で分かって貰うアイツも有難迷惑だわ!!

 いつの拷問術だよ!?」








「はぁ-----------っ…」

腹を押さえ、深いため息をついて街を歩く

(あークソ、イライラする…どーしようもないの分かってるけどイライラする。

 男所帯で女1人生理痛に悩んだって誰も分かってくれないのは

 今に始まったことじゃないのも分かってるけどイライラする。

 何にもないけどイライラする。つーかイライラするんだよアレがくると!!)

1人悶々としながら凄い形相。

「ダメだ…仕事になんない。強い薬買おう」

そして近くにある大江戸マートに向かった。

すると、店の中から見覚えのある女性が出てきた。

「あ、妙ちゃん」

は呟くと、向こうも気づいての方を向く。

ちゃん。お仕事ご苦労様」

スーパーの袋を持って近づいてきたのは志村妙。

万時屋で働く新八の姉にして、近藤のストーカーの被害者。

その関連もあって、2人は少し前から親しくしていた。

「妙ちゃんは買い物?」

「ええ、万時屋の金欠野郎共にご飯を作ってあげようと思って」

妙はそう言ってにこりと笑った。

彼女の料理の腕を知っているは「そっか」と苦笑する。

ちゃんもお買い物?」

「あ、うん…ちょっと生理通酷くて…

 仕事になんないから薬買おうかなって」

はそう言って腹を摩った。

「あら大変ねぇ…男所帯に女1人じゃ

 誰も助けになってくれないでしょう?」

「そうなんだよーまぁ、もう慣れたからいいんだけどね」

ははは、と笑う

「お腹冷やさないようにカイロを腰とかお腹に貼っていれば楽になるわよ」

妙はそう言ってにこりと笑った。

「ありがと。やってみる。

 それじゃ、またね!」

は妙に手を振り、店の中へと入る。

妙も手を振り返し、万時屋の方向へ歩いて行った。

「…っあたた…」

下ろした右手でそのまま腹を押さえる。

そしてフラフラと店の中に入った。

(…なんっか今回痛み強いなぁ…いつもなら屯所の頭痛薬で痛み治まるのに…)


そう


妙の言う通り、こぉいう時屯所じゃ誰も力になんかなってくれない。


朝と夜はご飯を作りにくる女中が何人かいるけれど、

それ以外はホントに野郎しかいないムサ苦しい場所だから。


(…別に、いいけど。伸縮だろーが出血だろーが非番以外は働くし。

 休む気ないし)





To be continued