ようこそ、音速でやってきた3月14日-後編-








その男は決してこの街で際立って目立っているわけではなかった。

特別背が高いわけでも、

特別ガタイがいいわけでも、

特別派手な服装をしているわけでもない

端正な顔立ちと全体的に黒で統一した服は人目を引くかもしれないが、

様々な種類の人間が集うこの街では至って「普通」の男だ。



…それでもは以前一度だけ会ったこの男の顔を忘れたことはなかった。



の様子を見た臨也はにこりと柔和な笑みを浮かべる。


「久しぶり」


あの時と変わらぬ笑顔で再び声をかけてきたが、

あの日とは違い親しい友人に話しかけるような態度でに近づいてきた。

それはとても友好的なはずなのに、は本能的に1歩後ずさりする。


「…その様子だとシズちゃんから俺の話は聞いたようだから、

 もう"社長の知り合いの折原臨也"を演じる必要はないよね。

 あ、でも知り合いなのは本当だから安心していいよ。首繋がっていたかったら社長には聞かない方がいいと思うけど」


「改めましてこんにちはさん。

 新宿で情報屋をしてる折原臨也です」


長いコートのポケットに両手を入れたまま薄ら笑いを浮かべ、改めて簡潔な自己紹介をしてみせた。


「…情報屋……」


"俺とお前のことどっかで知って、黄巾賊のガキ共にお前のこと流したに決まってる"


はそれを聞いて以前静雄が言っていたことを思い出す。

彼の様子を見ていると「あれはあなたの仕業なんですか」と聞く必要もなさそうに思えた。

仮にそうだったとして、彼の忠告を聞かずに静雄と一緒にいることを選んだのは自分なのだから。

だが目の前の男は自分がそうすることさえも予測していたような、

まるで最初から自分がそうすることを分かって忠告したのではないかというような余裕を見せている。

はあれ以来静雄の前で臨也の話をしていない。

静雄の様子からするとしない方がいいと思ったし、する必要もないと思っていた。

だからこの男の情報は「社長の知り合い」で「静雄の同級生」という以外ひどく曖昧なままなのだ。



「元気にしてた?シズちゃんからDVとか受けてない?大丈夫?」



ポケットから右手を出して自分の顔を指差す。

その言葉を聞いた瞬間、凍りついていたの表情が歪んだ。


「ま、受けてたら今頃は病院かあの世行きか」


臨也はクッ、と喉の奥で笑って再びその右手をポケットに突っ込む。


「俺の話をしたんなら「新宿には行くな」ぐらい言ってもよさそうなものだけど…

 アイツも抜けてるからね。しょうがないか」


ハッと鼻で笑って再びつかつかとに近づいた。

は何とか平常心を保とうと唇を噛み締めて臨也を睨みつける。


「…今日は仕事で急用があって寄っただけです。すぐに帰ります」

「そう?そりゃ残念。この後あいつと会う予定でもあるの?」


帰ります、とは言ったがの足は動かない。

3月だというのに冷や汗が滲む。

の肩がびく、と強張ると臨也は楽しそうに目を細めた。


「君も大概奇特だよねぇ。あんな男のどこがいいんだか。

 利点があるとすれば普段宙に浮くはずのないものが浮くところを見れたりとか…

 うーん、必死に考えてもそれぐらいだよ?」


会社帰りのサラリーマンが多く行き来する駅前は酷く騒がしいはずなのに、

今なぜかの耳にはこの男の静かな声しか耳に入ってこなかった。

この声だけを聞けと、この言葉だけを聞けと、淡々とした低い声がの鼓膜をおかしくする。


「無実だったにせよ一応前科持ちなわけだし、さっさと縁切った方が身の為だと思うけど」

「……?どういうことですか…?」


は眉をひそめて問いかけると臨也は初めて見せる意外そうな表情を浮かべた。

無実、という言葉が引っかかる。

毎日街の何かを破壊している静雄は確かに警察から危険視されているが、

刑事事件になったという話は聞いたことがない。


「シズちゃんに聞いてないんだ?まぁ、あの話したらキレて君に危害加えるかもしれないしねぇ」




「俺、昔あいつを嵌めて警察署行きにさせたことあるから」





の表情が凍りついた。

「まぁ警察の調べで無実は証明して貰ったらしいんだけどね。

 警察にも幾分できる奴がいたってことかな。

 器物破損でしょっぴかれただけらしいから、しぶといというか往生際が悪いというか」

ははっと笑う臨也の前では呆然と立ち尽くしていた。

ずっと、疑問には思っていた。

なぜ静雄があそこまで折原臨也という男に対して過敏な反応を示すのか。

話してくれる日がこなくても、いずれを待とうと思って聞こうとしなかった。


「でも君がいることでやりやすくはなったかな。

 仮に俺が今ここで君をどうにかしたとして、それを全部アイツがやったことにするのは簡単だからね」


停止しているの思考回路を無視して、男の舌は回る回る。

ミシリと何かがの中で音を立てると思考よりも早く四肢に伝達が行き渡った。


「警察もあいつに関しては危険視してるし、ほら今デートDVって流行ってるでしょう。

 相手が君みたいな普通の子なら尚更警察も…」


その瞬間、一歩踏み出して距離を詰めたが右手を振り上げ、

臨也の顔に向かって勢いよく振り下ろした。

彼女が肩にかけていたバッグが音を立てて地面に落ちる。


周囲にいた人間は驚いて2人の男女に目を向ける。

こんな街中で痴話喧嘩かと目を疑ったが、男の方は女の手を左手で掴んでガードしていた。


臨也は趣味の過程で何度も女が手を振り上げる仕草を見てきているが、

彼女の仕草はこれまでのどのケースをも違う。



「…グーで来たのは君が初めてだよ」



が振り下ろした手は堅く握り締められている。

それは明らかに張り手ではなく、臨也に拳で殴りかかろうとしたからだ。


「ハハハッ…怖いなぁ、そんな顔シズちゃんの前じゃ見せたことないでしょう。

 女は逆上すると大抵張り手しに来るんだけどまさか殴りに来ようとは…

 口より先に手が出る所もアイツに似ちゃったのかい?末期だね、君」


決して人に手を上げるように見えない大人しそうな女の表情は怒りに満ちており、

大きな瞳の奥では瞳孔が開いている。

受け止めた右手は小刻みに震えていた。


「…当たり前です。静雄さんは私が怒るようなことは言いませんから」


手首を掴まれながらもその右手はまだ目の前の男にダメージを与えようと力を緩めない。

そんなの表情を見て臨也はクツクツと笑い始めた。


「…静雄さんから貴方のことを聞いた時、二人がいがみ合うのはきっと少し仲が悪いんだなって思ってました」


の方から先に口を開く。


「元の性格の相性が悪くて、だから喧嘩になるのはしょうがないのかなって」

「でも違う」



「私も貴方が嫌いです」





「私が日本の法律を壊して殺したいくらい、嫌い」





殺す、という単語を口にしたのは、恐らく初めてだろう。

が力を緩めないので臨也もその細い手首を離すことが出来ない。

こんな細腕だ、黙って押さえていれば力尽きてそのうち緩むだろう。


「俺も、あいつには1秒でも早く死んで欲しいよ」


この腕を掴んで捻りあげれば形勢逆転するだろうが、なにせ人の目がある。


「…その為に私を利用したいんですか?」

「さぁね。まぁ今のところ君はあいつの唯一の弱点だろうし、したいといえばしたいかな。

 君はもう少し自分の役割の重要度を知るべきだと思うよ。

 君はあいつの着火剤にもなりうるし、鎮火剤にもなりうる。危なっかしくて厄介で、物凄く邪魔なんだよね」


にっこりと笑顔を浮かべて「邪魔」と言い切る。

はそこで右手を引いてようやく体勢を元に戻したが、怯まず臨也を睨みつけた。


「させません。私が静雄さんを守ります」


小柄な女が吐いた言葉に臨也は思わず吹き出した。


「君みたいな何もない子がどうやってあの化け物を守るのさ!?

 サングラスでも割れないように持っとく!?」


咄嗟に出た強がりにしては傑作だ、と両手を叩いて大声で笑う。

半年間、仮にも「平和島静雄の彼女」として生活しておきながら近くで一体何を見てきたというのか。



「馬鹿にしないで下さい」



の強い口調が臨也の笑い声を中断させた。

「確かに私は静雄さんに喧嘩を売ってくる人たちの鉄パイプからも、

 拳銃からも、貴方がコートのポケットに仕舞っているナイフからも静雄さんを守ることはできません」

その言葉で一瞬臨也の表情が変わった。

…ナイフ、気付いていたのか。


「でも私だって情報を扱う者の端くれです。

 静雄さんの周りに貴方が流す情報が正しいかどうかぐらいの判断はできます」




………そうか。




折原臨也は笑っていた。

それは彼女の反応が面白くて笑っていたのではない、

自分の思っていたことが正しかったのだと実感できて嬉しかったからだ。


平和島静雄とその彼女を見た人間はみな口を揃えて言う。

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「あの静雄の彼女なのにかなり普通だ」と。


際立って美人というわけでもなく

際立ってスタイルがいいというわけでもなく

本当に「普通」という言葉が似合う女を見ればそれは限りなく妥当な表現なのだ。


だがその表現は間違っている。



あの平和島静雄の彼女が普通なはずがない。

あの平和島静雄に付き添える女が、普通であるはずがない。





あの男と出会わなければこの先「普通」の枠から外れることもなかったのだろうが、

よりにもよって池袋で最も恐れられる男と関わってしまったばっかりに

彼女は自分でも気付かないうちに「普通」という道を踏み外してしまっているのだ。



自分が送っている日常が「普通」だと言ってしまえる時点で

彼女はもう「普通」ではないというのに。




「…やっぱり末期だね、君」

「…ありがとうございます」



は落としたバッグを拾い上げ、今までにない強い目付きで臨也を睨みつけて皮肉を皮肉で返す。

だがその後は律儀にも深々と頭を下げて踵を返し、落としたままの時計を拾わずに駅へ駆け込んで行った。

「…楽しいなぁ全く…」

ククッ、と喉の奥で笑いながら、が落としていった時計に近づく。



「俺は君みたいな人間、大好きだけどね」



そう呟くと既に2度落として文字盤にヒビの入った時計を躊躇いなく踏みつけた。








池袋駅


電車を降りたは重い足取りでふらふらと改札を出ると、入口の太い支柱に寄りかかって体を落ち着かせた。


(……疲れた…)


走ったわけでもたくさん歩いたわけでもないのに激しい動悸がして胸が痛い。

額に滲んでいるのは暑さから出た汗ではなく嫌な冷や汗だ。

頭は混乱したままだし、未だ興奮状態で何がなんだか分からない。

新宿に行った数十分がまるで夢だったかのように現実味がなかった。


『仮に俺が今ここで君をどうにかしたとして、それを全部アイツがやったことにするのは簡単だからね』


汗が滲む額を押さえ、堅く目を瞑る。

慣れた人混みに酔ってしまいそうになる。


(…私がしっかりしなきゃ……)


あの男だけは、これまで何度も自分を攫ったカラーギャングや暴走族とは違う。

どんな隙間も見逃さず、粗を見抜いて広げて、必ず言った通りにしてみせる。


「…………静雄さん…」


掠れ声で呟いた声は自分にだけ聞こえる。それでいい。

だが




「-------?」




雑踏の中から思い浮かべた顔が声を出した。

ぱっと顔を上げると雑踏の中で頭1つ大きい人影が近づいてくる。

「もう仕事終わってたのか。つーか…もしかして帰る途中でメール見た?」

静雄は人混みに逆らって歩いてくると携帯で時間を確認しながら首をかしげた。

後ろからトムも一緒に歩いてくる。

近づいてきてもまだ信じられなくては目を丸くさせたまま呆然と静雄を見上げる。

の反応を不思議に思った静雄は銜えていた煙草を潰そうと携帯灰皿を取り出した。


「大丈夫か?顔色…」


静雄がそう言って顔を覗き込もうと屈むと、頭がそのまま近づいてきて華奢な両腕が静雄の胸にしがみついた。

屈もうとしていた静雄は途中で硬直する。

周囲を歩いていた人間は「なんだカップルがイチャついてるだけか」と一瞥して通り過ぎていくが、

当の静雄と横にいたトムは気が気じゃなかった。

抱き合うどころか手さえ繋がないのに、こんな人通りの多い所で急に抱きつかれると硬直せざるをえない。

が黙ったままベストに顔を埋めているので静雄は長い腕を間抜けに宙で泳がせたまま動けなかった。

心なしか、しがみつく両腕が小刻みに震えている気がする。



「…どうした?」



とりあえず静雄は首を傾けての頭を見下ろす。

は顔を埋めたまま首を横に振った。


「どっかのバカに絡まれたのか?」


は再び首を横に振る。


「またひったくりにあったのか?」


更に首をぶんぶんと振った。

じゃあ何だ、と静雄は眉をひそめて首をかしげる。

するとの籠った消え入るような声が聞こえてきた。


「………転んだんです…」


それは厳しい!厳しいぞちゃん!!!


静雄の横にいたトムは心の中でツッコむ。

彼女は例え転んでも「転んじゃいました」とか言ってへらっと笑うタイプだ。

間違っても転んで痛いから恋人に泣いて縋るような軟弱な女ではない。


「…泣くほど痛かったのか?」


いや聞き返す言葉違うだろ。鵜呑みにするなよ。


再び心でツッコむトムの横で静雄は困ったように頭を掻いた。

恐らく静雄も彼女が嘘を言っているのは分かっているのだろうが、

本人が隠したがっているのだから無理に聞く必要もないと思ったのだろう。

静雄は煙草を持っている左手をの背中から遠ざけて、右手をの頭に乗せる。

自分の金髪とは違う黒髪独特の艶やかさは指に絡まらずにするりと滑った。

…改めて彼女の髪に触ったのは初めてかもしれない。


「……こうしてれば弾避けぐらいにはなれますよね」

「?なんか言ったか?」


こもっていて聞こえなかったので聞き返したが、は顔を上げて「いえ」と微笑んだ。

静雄は首をかしげたがそれ以上聞く気はない。


「……あっ」


何かを思い出したはぱっと顔を下げ、慌てて自分の左手を見た。

「…時計落としてきちゃった…」

もともとチェーンを留める金具が緩んでいて外れやすくなっていたのだが、

落としてそのまま新宿に置いてきてしまった。

初めての給料で買ったもので気に入って長く使っていたのがやはり寿命だったようだ。

いつもよりスカスカして違和感のある手首を眺めていると、静雄が自分の手に引っかけていた袋を差し出してくる。

は僅かに赤い目尻を擦りながら静雄の手元を見下ろし、首をかしげて顔を上げた。

「今日からこっち使っとけ」

「……え…?」

は困惑した表情を浮かべながら袋を受け取って中を覗く。

入っていた細長い箱のリボンを解いて蓋を開けると、中には使っていたものと似たデザインの時計が入っていた。


「時計…」


時計部分は鈍い金色でアンティーク調の加工がされており、同色の小さな花がくっ付いている。

落ち着いた色の細く長いベルトは途中で交差されて手首で二重になるデザインだ。

「可愛い…!」

箱から時計を取り出し、目の前まで持ってきてまじまじと見つめる。

よくよく見ると文字盤や秒針にも細かい装飾がされていてとても可愛らしい。

しばらくこの時計を見つめてうっとりしていたが、ハッと我に返り慌てて静雄を見上げた。

「どうして時計…」

「いや今日ホワイトデーだから」

「い、いえそうじゃなくて…どうして私の時計、壊れてるって…」

困惑と興奮が交ったような焦りを見せる

静雄は再び困ったような顔をしてトムと顔を見合わせた。


「セルティが教えてくれたんだ」

「…セルティさんが?」


はきょとんとして首をかしげる。


「前にお前と会って話してた時、お前が時計落として「そろそろ買い替えなきゃ」って言ってたの教えてくれたから」


静雄の言葉を聞いてもはいまいちピンと来ない。

なにせ常に金具が緩い状態だったので何回も落としかけてきた。

だからセルティと一緒にいた時も金具が外れて落としてしまったのかもしれない。


「これはまぁ…トムさんが一緒に選んでくれたんだけど」


静雄はそう言ってばつが悪そうにまた頭を掻いた。

は両手で包むように持った時計を改めて見下ろす。

「なんだか…みんなから貰ったみたいで申し訳なくなっちゃいますね」

照れくさそうにはにかんで再び時計を両手で包んだ。



「ありがとうございます!大切にします!」



がそう言ってあまりに嬉しそうに笑うものだから、つられてついこちらの表情も緩む。

は早速時計をつけようとベルトを外して手首に巻き付けた。


「………………」


細い金具を穴に通そうとするが二重になったベルトが逃げてなかなか通らない。

十数秒四苦八苦してようやく金具な穴を通ったが今度は通ったベルトが留められない。

「あれ?」と小声で何度も呟きながら細いベルトと格闘している。

静雄は30秒ほど見守ってたが耐えかねて助け船を出した。

「…お前こんなに不器用だったか?」

「前のはチェーンでばちっと留めるだけだったので…で、でもこっちの方が落としにくいですよね!」

細いベルトを持って留めてやるとは恥ずかしそうに苦笑する。

まぁ確かに片手でベルトの穴を通せないという人間は少なくないが、

知っていれば留めるタイプにしてやったのにと思った。


ちゃん、これ俺からお返し。チョコ美味かったよ」


しばらく横で見ていたトムがそう言ってケーキ屋の袋らしきものを差し出してきた。

「店の女の子に今流行ってるって聞いてさ。

 ちゃんも甘いモン好きだからどうかと思って」

「あ、駅前の胡麻プリン!食べてみたかったんです!ありがとうございます!」

頭を下げて礼を言いながら袋を受け取る。

「じゃあこのまま飯食いに行くか。何食いたい?」

「はい!今日はラーメンがいいです!」

「お前ホントラーメン好きだな…いや俺も好きだけどさ」

は袋を引っかけた右手をびしっと挙げる。

静雄は呆れるように笑いながら煙草を携帯灰皿に突っ込んで歩き出した。

もその後に続いて駅を出たが、その場に残ったままでいるトムを振り返り、揃って首をかしげる。


「?どうしたんすかトムさん」

「この時間混んじゃうから早い方がいいですよ」


早くどうにかなればいいと思うのに、いつまでもそのままでいればいいと思う。

(…なにこれ親心?)

トムは呆れ顔で頭を掻いたが、まぁいいかとすぐ苦笑した。

どうせ自分がいてもいなくても変わらないのなら助け舟を出してやるぐらいのことはしてもいいか。

スーツのポケットに両手を突っ込み、先を歩く凸凹した男女の後をゆっくりと追った。

は歩きながらコートの袖を捲くって左手首を見つめ、嬉しそうに笑う。

静雄はその横を歩きながら銜えた煙草にすっかり手に馴染んだジッポライターで火を点け、煙を大きく吸い込んだ。

煙が手首まで届いてくると、自分は吸わないが彼がそれを「美味い」と言うのが何となく分かったような気がした。








シズちゃんがキレない珍しい小説。
シズちゃん夢を、というより新羅とセルティのバカップルっぷりを書くのが恥ずかしいというのが本音。
…まぁいいか。公式でバカップルだものな…
腕時計のモデルは、く●き亭というブランドのアンティーク時計です。
シズちゃんのライターはオ●ビアンコというブランドがモデル。
ちょっといっぱいになったので書けなかったんですが、新羅はシューターの手入れ用品とPDAのソフトケースをお返しにあげたんだと思います。
狩沢さんが知り合いの男の子にはみんなあげるって言ってたから狩沢さんには貰ったんでしょうか。
シズちゃんが女の子に気の利いたプレゼントが出来るかどうかは不明(笑)…無理だな…