雪降って少しでもテンション上がらなくなったらもう年だと思え
-後編







かーつらァァァアアアア!!!!!



同時に抜刀し、同時に聞き足を踏み込む総悟と

「ちッ…!」

サンタ(桂)は懐に手を入れ、んまい棒を取り出して放り投げた。




ドォン!!!!





んまい棒が破裂して、あたりは真っ白な煙に包まれる。

「ゲホッ!くそっ…煙幕か!!」

「あンのヅラァ!!俺らを巻き込むんじゃねーよ!!」

取っ組み合いをやめた銀時と土方は煙の中で目を凝らした。

段々と薄れていく煙の中に、既にサンタ(桂)の姿はない。

「追え!そう遠くへは行ってねェはずだ!!」

「分かってまさァ!」

「早く片付けねーと8時に間に合いませんよ!」

総悟とは走ってその場を離れる。

すると

「副長ォ!」

1台のパトカーが3人の前で止まり、運転席から原田が顔を出した。

土方は助手席から無線機を引っ張って口元へ持ってくる。

「かぶき町一丁目で桂を発見!

 総員捜索と検問に当たれ!!」

乱暴に無線を戻し、パトカーの助手席へ乗り込んだ。

「そーゆーわけだ。てめーらはせいぜいクリスマスでも何でも楽しんでろ」

銀時と新八に向かってそう言い捨て、パトカーはサイレンを鳴らして猛スピードで発進する。

嵐のように過ぎていった出来事に、2人は呆然と立ち尽くすのみ。

「……やっぱ忙しそうですね…真選組は」





その頃

「あぁよかった、一番大きなクリスマスケーキまだ残ってて。

 やっぱりこういう日はドンと奮発しないとね」

大きなケーキの箱を抱え、嬉しそうに街を歩く妙。

「姉御!私ケーキ入刀したいヨ!」

「はいはい、みんなの分平等に分けてちょうだいね」

その横を歩く神楽と微笑ましい会話を交わしながら、クリスマス一色の街を歩いていく。

「…あの、妙ちゃん。本当にいいのか?

 皆でやる鍋パーティーに僕も参加して…」

反対側を歩く九兵衛が遠慮がちに妙の表情を窺った。

「何言ってるの九ちゃん。お鍋はみんなで食べるから美味しいのよ。

 ケーキもしかり、大勢いた方が楽しいでしょ?」

妙はにっこりと笑って九兵衛を見る。

そんな彼女の笑顔を見て九兵衛もつられるように笑った。

「でも残念だな…ちゃんが来られないのは」

「そうね…きっと今頃、お仕事で江戸の街を走り回ってるんじゃないかしら」




かーつらぁああああ!!待てゴルァァアア!!!!




…全くその通りだった。




やっとの思いで桂を発見した一同は、それを追って江戸の屋根という屋根を跳びまわっていた。

「フン、クリスマスもエンジョイ出来ぬとは無粋な連中だ」

テメーが出てきたからじゃボケェ!!!

 ってか単語のチョイス古いんだよ!!!」

軽やかに逃げる桂の背中を追いながらは決死の表情で怒鳴る。

伏せろィ」

「ッ」

後ろから聞こえた総悟の声。

咄嗟にその場にしゃがみ込むと





ドォンッ!!!






総悟の肩に積まれたバズーカから強烈な一撃。

瓦屋根の一部が派手にぶっ飛び、辺りは爆煙に包まれる。

「殺ったか!?」

晴れて行く爆煙の中に、桂の姿はない。

「これしきで死ぬようなタマじゃねェ。

 下降りて探すぞ」

バズーカを抱えなおし、総悟は隊士を連れて屋根の下へ降りる。

は携帯を出して時刻を見た。

時刻は7時50分。

「あーもう!!」

ダンッ!と右足で強く屋根を踏んで怒りをぶつけ、総悟に続いて屋根を降りる。




恒道館道場

「わァ!美味しそうアル!!」

居間のコタツに置かれた鍋を覗き込み、神楽は目を輝かせている。

「やっぱりこういう寒い日はお鍋よねー

 さぁさ、みんな沢山食べてちょうだい」

「そうですか、それじゃあ遠慮なく」

5人で囲っていたはずのこたつから、6人目の声が聞こえた。

5人の目線が下座へと向く。

下座には我が物顔で寛いでいる桂。

何寛いでんだお前ェェェェ!!!!

「いや、さすがの俺もこの寒空の下を逃げ回るのが嫌になってな」

コタツに片足乗せて怒鳴る銀時を受け流し、

桂は勝手に鍋をよそっている。

「じゃあさんたち未だ桂さんを探し回ってるってことですか?」

「そういうことになるな」

「外冷えてきたみたいだし、風邪なんかひかなきゃいいんだけど…」

妙は心配そうに窓の外を見た。

すっかり夜が更けて、冷たい空気は今にも雪が降ってきそう。






「はッ…くしゅん!!!」

屯所に戻ってきたは玄関でブーツを脱ぎながら豪快なくしゃみをした。

「あークソ…桂の野郎は結局見つからないし…

 ドラマ完全に逃したし…」

帰宅したのは午後10時過ぎ。

丁度ドラマスペシャルは終わっていた。

もうクリスマスという日自体が終わろうとしている。

「なーにがクリスマスだコノヤロー」

「諦めろィ」

同じく帰ってきた総悟がの肩を叩く。

は溜息をついて足取り重く広間へ向かった。

「おー帰ったか。ご苦労だったな」

居間には近藤を始め、各隊士が集まっている。

近藤は今日1日松平と共にお上の接待で朝から屯所を開けていた。

「…何の騒ぎですか?」

「あぁ、世間もクリスマスだって浮かれてることだし、

 どうせ俺らは忘年会なんかやる暇ねェから今パーッと打ち上げちまおうってことになってな」

近藤はそう言って笑い、徳利を持つ。

「オイオイ近藤さん、そんなことして何か緊急の事件が起こったら…」

土方も呆れた顔で広間を覗いた。

総悟は既に隊士に混じって呑み始める準備をしている。

「そん時はそん時さ。1人1杯!それ以上は駄目だぞ!」

寛大な近藤に隊士は大喜び。

土方とは顔を見合わせて苦笑した。

「…まぁ、いいか」

土方は笑いながら新しい煙草を銜え、火をつけながら畳に腰を下ろす。

「近藤さん、お酌します」

「おぉありがとう」

は酒の入った徳利と猪口を持って近藤の前に座った。

すると


「あ、今のうちに録画したドラマ見ちゃおうかな」


思い立ったように山崎が立ち上がり、1本のビデオを持ってテレビに近づく。

と土方はバッ、と首を回して山崎を見た。

「録画したの!?8時からやってた今日のドラマ!!」

がしっと山崎の肩を掴んで目を見開く

「あ、うん。結構前から宣伝してたから気になって。

 巡回に行く前に録画予約しといたんだ」

山崎はそう言ってビデオテープを左右に振る。

「でかした山崎」

土方がひょいとそのテープを取り上げ、ビデオデッキに入れた。

「よっしゃ見よう!!」

は近藤の酌そっちのけで自分の猪口に酒を注ぎ、テレビの前に陣取る。

たった1杯でつぶれている隊士や、出来上がって馬鹿騒ぎをしている隊士。

そんな煩い声に負けないようにテレビの音量を最大にしてドラマに夢中の4人。


「お」


縁側近くにいた近藤が外の異変に気づいて襖を開ける。

「おい、雪だ」

近藤の声に、隊士たちは顔を上げて外を見た。

開け放された襖から冷たい冬の風。

その風に流されるように、ふわりふわりと雪が舞い降りてきている。

地面が冷えているのか、庭の土に落ちた雪は溶けずに辺りを白く染めていた。

「ホントだ!」

は縁側まで身を乗り出して空を見上げる。

「こりゃ積もりそうだな」

「積もると巡回面倒くせェんだよな…」

嬉しそうに笑う近藤の横で、土方は煙草を銜えたまま面倒くさそうに前髪をかきあげた。

「積もんねーかなー積もったら土方さんが寝てる間に雪だるまの中に詰めて

 屯所の前に飾ってやるのに」

「オイ誰か夜のうちに雪掻きしといてくれ」

酒を少しずつ口に運びながら外を眺める総悟。

土方は眉間にシワを寄せる。

はそんな2人を見て笑い、再び雪の振る夜空を見上げた。






サンタ来ないし、ピザもケーキもないけど





今年は







この馬鹿であったかい人たちと

馬鹿で楽しいクリスマスを過ごしました。








今年は真選組でクリスマスです!
忙しそうですが、やっぱ近藤さんがみんなを思って馬鹿騒ぎをしてると楽しいと思います。
新年も雪ネタを書きたいなぁと。皆様よいクリスマスを!